表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
911/1509

テトラ9

「遠くに見える石塔らしきモノはなんですか?」

 前を歩く女性へとヒヅキが問うと、女性は顔を横に向けてヒヅキの方へと視線を向ける。その前に一瞬、石塔へと視線を向けたような気がした。

「あれは結界石ですね」

「結界石?」

 聞き慣れない言葉に、ヒヅキは首を傾げる。

「そのままの意味ですよ。あの石塔がこの森を覆っている魔法を発動させているのです」

「境界付近を中心に発動している妨害魔法ですか?」

「ええ。流石に気づいていましたね。それが結界。この地への侵入を防ぐ魔法です」

「こんな内側に在るんですね」

「はい。あれは起点ではありませんから」

「どういう意味ですか?」

 魔法にあまり詳しくは無いヒヅキは、女性の言葉に考えるように問いを返す。

「あれは終点の役割を担っています。それだけではないのですが、あの結界石より内側は妨害魔法の効果が及ばないのです」

「なるほど。では、起点となる部分は別に?」

「ええ。それは森と外の境界付近に」

「なるほど」

 ヒヅキが女性の説明に頷くと、それを確認した女性は前を向く。それから少しして、「ああ」 とわざとらしく声を出して顔を上げたと思ったら、女性は顔をヒヅキの方に向けて口を開いた。

「一応伝えておきますが、結界石には近寄らないでくださいね?」

「何故です?」

「あの結界石には防衛機能が備わっているので、近寄ると大怪我をしますよ」

「そうでしたか」

 元々近寄る気もなかったので、ヒヅキは大した問題ではないと頷き、理解した事を伝える。

 それを確認した女性は、微笑むように目を細めた。しかしその微笑みは、何処か今までの優しげなものとは違って見えたヒヅキは、訝しげな目を女性へと向ける。

「ええ。貴方でも最悪死にかねないので、お気をつけください」

「……そうですか」

 直ぐにいつもの微笑みに戻ったものの、先程の値踏みするような目は少しヒヅキを苛立たせた。とはいえ、表に出すほど強くはないし、直ぐに苛立ちも霧散したので、ヒヅキは気にしない事にした。

 それはそれとしても、結界石の防御機構というのはそれほど強力なのかと驚愕する。それとともに、近づかないようにしようと改めて心に刻む。元から近寄る気はなかったが、何かの拍子にうっかり近寄ってしまう可能性もあるだろう。

 女性は顔を正面に戻す。

 ヒヅキは女性の後頭部に目を向けるも、何故だか見られているような感覚が湧く。

(まぁ、この相手ではな)

 しかしそれも、相手を思えばおかしな事ではないのだろう。それだけ女性も得体のしれない人物だし、それぐらいは無ければ神の敵とまでは言われないだろう。

 そこまで考えたところで、そういえばドワーフの国で水晶の欠片を回収したんだったなとヒヅキは思い出す。

 女性の後に続いて歩きながら、器用に背嚢から水晶の欠片を取り出したヒヅキは、それを渡そうと女性に声を掛けた。

「あの、水晶の欠片をドワーフの国でも見つけたので、どうぞ」

 そう言いながら、ヒヅキは水晶の欠片の入った小箱を女性の方へと差し出す。

 ヒヅキの言葉に女性は立ち止まると、身体ごと振り返り、ヒヅキが差し出している小箱に視線を向ける。

「よろしいのですか?」

「ええ。私では使い道がないので」

「そうですか。では、遠慮なくいただきます」

 女性はヒヅキに近づくと、丁寧な手つきで小箱のふたを開けて、中に入っていた水晶の欠片を受け取ると、そのまま手のひらから水晶の欠片を体内へと吸収した。

 その瞬間、女性の存在感が増したような圧迫感をヒヅキは覚える。

 水晶の欠片を吸収した事で、また力が戻ってきたのだろう。まだ完全に力は戻ってないというのに、近くに居たヒヅキは、既にウィンディーネなんかとは比べ物にならないほどの気配を感じていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ