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テトラ8

 実際の距離以上を進んでいたかもしれないというのも大変な事なのかもしれないが、今はそれよりも、ここが魔族の領土だという方が大事であった。

 土地勘もないというのもだが、そもそも魔族という種族をヒヅキはよく知らない。同じ人間でも場所によって習慣や文化が違うが、種族が違えばそれも顕著になる。しかも人間の領土からかなり離れた場所の他種族が治める土地。もはや世界が違う様なものだろう。

 ただ、現在はここにもスキアが襲撃してきている可能性があるので、一概にそうとも言えないが。

「それでどうします? 必要でしたら私が案内致しますよ?」

 優しげな声音で女性がそう提案してくる。この周辺を調べたような事を先程言っていたので、ある程度は案内が出来るのだろう。だが、ヒヅキはイマイチ女性の事を信用していないので、どうしたものかと悩んでしまう。敵ではないとは思うのだが、如何せん女性には謎が多すぎる。

 しかし、それでも案内が居た方が何かと便利なのもまた事実。スキアが襲撃しているかもと予想したところで、実際のところは分からない。現にドワーフの国は、ヒヅキが来た時には地下に籠って健在であった。

 ヒヅキの乏しい知識でも、魔族は魔法に精通した種族という認識なので、もしかしたら、どちらかといえば魔法には弱いスキアの襲撃も凌いでいるかもしれない。

 その場合、魔族国内での習慣や常識といったモノがある程度は必要になるので、やはり案内というのは大事な存在ではあるだろう。

「………………そうですね」

 なので、ヒヅキは悩む。このまま頼んでしまうのがいいとは思うが、やはり警戒もしてしまう。だが、しかしと、内心で葛藤したヒヅキは、結局女性の申し出を受ける事にした。

 ヒヅキが案内を頼むと、女性は頷いて近づいてくる。

 それに警戒をしたヒヅキだが、女性は気にせずそのまま横に逸れて先へと歩みを進めていく。

「さ、こちらです。まずは外に出るとしましょう」

 顔だけをヒヅキの方に向けてそう告げると、女性は顔を正面に戻して森の中を進む。

 一瞬悩んだヒヅキだが、案内を頼んだ以上付いて行かない訳にもいかないかと諦め、女性の後を追う。

 森の中は薄暗く、不気味な黒い木々が並んでいるが、木々の間隔はそれなりに広いので、仮にヒヅキが女性の横に並んで進んでも問題ないほど。

 だが薄暗いからか、それとも木の並びのせいか見通しが悪く、油断していると女性を見失ってしまいそうになる。

 森の中には生き物が居ないのか、今のところヒヅキは何にも遭遇していない。それに気がつくと、そういえば鳥の鳴き声すら聞いていないなと思い出す。

 ヒヅキがそんな事を考えている間も、女性は迷いない足取りですいすいと進んでいってしまう。まるで平坦な場所の様に女性は進んでいるが、足下は木の根のせいでボコボコとしていて歩きづらい。それに土も柔らかく、慣れていない者は足をとられるだろう。

 森歩きには慣れているヒヅキだが、それでもこの森は歩きづらいなと思ってしまう。

 女性が木々を避けて進んでいく後を付いて行きながら、ヒヅキは周囲に目を巡らす。

 視界は相変わらず悪く、どこも黒ばかり。先の様子など見えはしないが、時折木々の合間に石の像のようなモノが立っているのが確認出来た。

 それは膝丈ほどの高さで、円柱形に掘りだされている。どれを見ても同じ形に高さなので、自然に落ちていた訳ではないだろう。

 ヒヅキは最初、それの同じ見た目のせいで同じ道を進んでいるのかと思いはしたが、近くの木に少し傷を付けてみたり、足下の目立つ場所に拾った枝を突きさしてみたりしたが、どうやら同じ道を回っているのではないらしく、それらを再度視認することはなかった。

 では、時折見かける石の塔のようなモノはなんなのかと思うも、遠目にしか確認出来ないので調べようがない。だが、もしかしたら女性ならば知っているかもしれないと思い、ヒヅキは女性に問い掛けてみる事にした。

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