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テトラ5

 昇ってきた木まで戻ってきたヒヅキは、そこから下に目を向ける。そこには、昇ってきた際に開けた枝葉の天井の穴が在るはずだった。

「……………………あの短時間で修復したのか?」

 驚愕に思わずそう言葉を零す。ヒヅキが周囲の様子を確認しに行っていたのは、ほんの1、2時間程度だろうか。それほどに短い時間だというのに、ヒヅキが開けて昇ってきた枝葉の天井の穴は、随分と小さくなっていた。完全に塞がった訳ではないが、それもこのまま放置していたら直ぐに塞がるだろう。

 とりあえずヒヅキは、まだ通れそうな上部の穴へと飛び降りるも、それも直ぐに穴が塞がった枝葉の上に着地する。

「はぁ。どちらにしても同じだったな」

 結局は足下に穴を開けながら進む事になったヒヅキは、小さく息を吐き出す。このまま何もしない訳にもいかないので、今開いている穴が完全に塞がる前にと、光の剣を現出して足下の枝葉を斬っていく。

 天井は層になっているというよりは最早塊なので、昇りよりは足下を削っていくだけの降りの方が楽だった。

 それでも結構な労力ではあるが、下の様子は判っているので、光の剣の長さを調節すればそれも問題ない。

 そうして時間は掛かったものの、何とか地上に降りる。その後に見上げてみると、既に上の方は修復が始まっていた。

 普通の木ではないのだろうとは最初から思っていたが、それにしても生命力が強い。見た事もない木なので、もしかしたらここだけに生えている魔法の木なのかもしれない。無論、ヒヅキは木について詳しい訳ではないので、ここら辺では普通に存在しているのかもしれないが。

 まぁ木についてはどうでもいいかと思い、ヒヅキは前を見る。

(とりあえず、不快感が無い感知魔法の範囲を調べてみるか)

 そう考え、ヒヅキは感知範囲を少しずつ拡げていく。最初の方は一気に拡げたが、途中からはかなり慎重に調べているので、これにも時間が掛かる。

 意識を感知魔法に向けながらも、ヒヅキは念のために魔力水を取り出してちびちびと飲んでいく。

 感知魔法を拡げているので、周囲の警戒もしっかりと行っている。

 しばらくそうやって感知範囲というより妨害魔法の有効範囲について調べていると、とうとう感知範囲と妨害魔法が接触する。相変わらず不快な響きを頭が襲うが、おかげで範囲については判明した。

 妨害魔法の有効範囲が判ったところで感知範囲を狭めていく。あまり拡げていては、少し移動しただけで妨害魔法に触れてしまいかねない。

 そうして感知範囲を狭めると、魔力水を1杯飲んで水瓶と容器を空間収納に仕舞う。

 水瓶と容器を仕舞ったところで、ヒヅキは歩き出す。いや、歩き出そうとしたのだが、ふと視線を感じて首をそちらに向ける。自然な動きで光の剣も現出させて戦闘体勢を取りながら。

「………………何故ここに?」

 そしてヒヅキは、視線を向けた先へと眉根を寄せて問い掛ける。視線の先に居たのは、知らぬ間に居なくなっていた女性であった。

 ヒヅキの問いに、女性はいつもの慈愛を感じる微笑みを浮かべるだけ。

 そのまま見詰め合いながら、ヒヅキは疑問を抱く。

(これは本当にあの女性か? ここが何処かは知らないが、偶然こんな場所に居るとは思えないが)

 ヒヅキがここまで来たのは、男に案内されたからだ。それも隠し通路らしき道を通って。

 それに先程確認したように、この森には妨害魔法が施されており、外からは簡単に入れそうにはない。更にここは怪しい森である。幻影ぐらい見せられても不思議ではないだろう。

 そういう訳で、ヒヅキは微笑みを浮かべたまま微動だにしない女性を訝しげに眺めながら、攻撃でもしてみようかと考える。感知魔法には反応は無いが、この女性に関してはそちらは当てにはならない。

(間違っていたら面倒なことになりそうだが……)

 しかし、仮に本物だとしたら、攻撃すると厄介な事になるなという思いから、躊躇ってしまう。女性はヒヅキよりも確実に強いだろうから。

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