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テトラ2

 会話も無かったので、そんなどうでもいいことを考えながら通路を進む。通路は長い直線が多かったが、しかしそれだけではなく曲がり角やうねうねと蛇行する道も時折在って、同じ道ばかりという訳ではなかった。

 そうしてやっと到着した道の終点。そこは鬱蒼として森の中で、外に出ても薄暗い。

 周囲が木しかないその森の中で、ヒヅキが通ってきた通路を振り返って見てみると、出口は大木の中に在った。いや、これも通路の入り口同様にそう見えるようにしているだけなのだろう。

 薄暗い空を見上げてみれば、枝葉をこれでもかと伸ばした木々が空を塞いでいて、ほとんど光が射してこない。それでも僅かにある隙間から見えた空は青かった。

 つまり現在は日中という事だろう。それも天気が悪いという訳でもないようなので、単純にこの場所が薄暗いだけのようだ。

 とはいえ、それは誰が見ても理解出来ること。問題があるとすれば、ここが何処かヒヅキには分からないという事か。

 森を形成している周囲の木々にもヒヅキは見覚えがない。妙に黒いその木は、見た事があれば覚えていそうなものだが、やはり記憶を探ってみても存在しない。

 太陽光が入ってこないからか温度は低く、においはかび臭い。木のにおいはほとんどせず、湿度は低いようでカラッとしている。

 妙な森だ。長い通路から外に出て、周囲を確認したヒヅキはそう思いながら、男の方へと視線を向けた。

 ヒヅキの視線が男に向くと、男は恭しく一礼する。

「ここが終点で御座います。そしてここは森の中心地。何処へ行かれるもヒヅキ様の御随意に」

「………………」

「ああ、ここが現在何処なのかは私にも分かりません。ですが、危険はないかと」

「………………何故?」

 現在の世界情勢については疎いらしい男の言葉に、ヒヅキは疑問を抱く。この地が現在何処かも知らず、この森にも久方振りに足を踏み入れたようにも思えただけに、何故危険が無いと分かるのか、それは当然の疑問だった。

 その疑問を察したのか、男はその問いの答えを口にする。

「この森は創造主により守護されております。そして、それはこの森の存続と紐づいている為、森が無事という事は守護が今でも生きているという事になり、つまりは危険はないという事に繋がるのです」

「………………そうですか」

 その守護について気にはなったが、説明を終えた男はヒヅキに一礼して短く別れを告げると、役目はこれで終わりとばかりに早々に大木の中へと入っていった。

 男が大木の中に消えた後、ヒヅキはその大木に触れてみたが普通の大木であった。そんな大木の周囲を回りながら探してみたが、通路への道は閉ざされたのか何も無い。

 しょうがないと気持ちを切り替えたヒヅキは、森の中をぐるりと見回す。しかし特に道らしい道もないようなので、進む方向の指針になりそうなものは何も見当たらない。

 周辺の気配を探るも、木々があるだけで生き物は何も発見出来ない。そして、ヒヅキの感知魔法の範囲以上に森は広かった。

 さてどうしたものかと思案するも、ずっとここで突っ立っていてもしょうがないので、今向いている方にでも進もうかと考え、その前に過去視を試してみる。

「……………………」

 無駄だろうと思いつつ過去視で周囲を視てみるも、やはりというか、そこにはさっきまでの自分の姿があるだけだった。

(…………………………………………何故あの男の姿は見当たらないのだろうか?)

 先程まで一種に居た男の姿が過去視に映らない事に、ヒヅキは訝しげに眉根を寄せる。

 過去視というのは万能ではない。区切られた時間の中しか視る事は出来ないし、視える範囲だってそこまで広い訳ではない。それに視えるのは、対象の形を漠然と模しただけの青白い何かだ。

 この辺りは修練次第なのだろうが、現在のヒヅキにはそうとしか視えない。

 そして、生き物しか捉える事が出来ないという特性もあった。それに別次元の中までは捉えられないし、一部対策を立てられれば捉えるのが困難な者も居る。

 つまりは万能ではないという事だが、それでも非常に有用で強力な眼である事には変わりない。まぁそれはそれとして、そういった欠点を思い浮かべたところで、ヒヅキはひとつの仮説を立ててみた。

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