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テトラ

 男に先導されて歩いていくと、直ぐに壁に到着する。広いとはいえ閉ざされた空間なので、そう掛からずに行き止まりに当たるのは当然の結果だった。

 しかし男にそれを気にした様子は無く、速度を落とさずに歩いていくと、そのまま壁の中へと入っていく。

 それを見たヒヅキは、この壁は見せかけなのかと思いながら壁を通る。そう直ぐに受け入れられるぐらいにはヒヅキも慣れていた。

 僅かに何かを通過したような感覚がありはしたが、特に気になるほどでもなく進んでいく。

 壁の先は、加工された石を隙間なく積み上げて造られたしっかりとした道で、石材も丁寧に加工されていて表面はとてもなめらかだ。

 終わりが見えないほどまっすぐに伸びた通路全てがその石造りの通路になっていて、それを普通に造った場合は途方もない労力と金が必要だろうと容易に理解出来た。

 しかし、ここは男を創造したような創造主が造った場所だ。通常の手法で造ったとは思えない。

(まぁ、何にせよ道は道だ)

 壁からは何かしらの魔法的な反応は感じられるが、それでも害になりそうな雰囲気はないので、無視する。ここで何かしてくるとも思えないというのもあるが。

 ただひたすらに真っすぐ進むと、遠くの方に曲がり角を確認した。振り返っても既に入ってきた場所は確認出来ない。どれほど進んだのかと思いながらも、まだ続くのかとも考える。

 男の移動速度は結構早いので、もしかしたらドワーフの国を出ているかもしれない。ただ、方向感覚が正しいかどうかは怪しいので、もしかしたらまだドワーフの国の中かもしれない。

 とりあえず外に出る事が優先かと思うも、この道は何処まで続いているのやら。それが気になったヒヅキは、前を進む男に問い掛けてみた。

「あとどのぐらいで外に出られますか?」

 ヒヅキの問いに、男は視線だけを後ろに向けて答える。

「現在でおよそ半分近くといったところです」

「そうですか。結構長いのですね」

「はい。昔は国境を幾つか越えたものです」

 疲れてはいないが、それでも想像以上に長い道のりにヒヅキが軽く驚くと、男は昔を懐かしむような声音でそう返す。それを聞いて、ヒヅキはどれだけ長いのだろうかと僅かに苦笑を漏らした。

 そもそもそんなに長い道を造って何をしたかったのかと、ヒヅキは疑問に思う。万が一の逃げ道にしても、流石に国を幾つか越えるほどの道は長大すぎるだろう。

 しかし、ヒヅキには想像もつかないほどの存在が造ったものなので、その理由もまた、想像を超えるものなのかもしれない。そう思えば、考えるのが馬鹿らしくなった。人によってはそれに何かしらの夢でも見るのかもしれないが、生憎とヒヅキはそんな可愛らしい感性は持ち合わせていない。

 それからは特に会話もなく、黙々と通路を進んでいく。男の移動速度も然ることながら、それでいて休憩をする様子が微塵もないというのも大概だ。そして、それに平然と付いていく方も十分人間を止めている。

 というよりもヒヅキ自身、現在の自分の種族が人間だというのも疑わしいと思っている。それどころか、自分は既に死人だと思っているので、何だったら不死者という可能性も考えている。不死者というのもお伽噺に出てきそうな話だが。

 それでも他に考え付かなかったので、とりあえずその辺りじゃないかと適当に考えていた。まぁ、種族なんてヒヅキにはどうでもいい話なので、その程度の考えであとは横に措いている。種族で神が殺せるのであればヒヅキも気にするのだが、残念ながらそんな事はない。

 もっとも、休憩無しで何日も歩いて平然としているヒヅキではあるが、歩きながら魔力水や保存食を細々と口に含んではいたが。しかしこれも、腹が減るとか喉が渇くとかは別段なかったので癖の様なものであった。

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