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残響115

「それはどういう意味ですか?」

「……何かご不明な点でも?」

 ヒヅキのやや険しい表情での問いに、男は何について問われたのか解らなかったが、それでも背筋を正して真剣な表情で聞き返した。

「神が空間を支配しているという話です。神が許可を出さなければ瞬間移動は出来ないというのは本当で?」

「はい。それでしたら誠で御座います」

「では、この光の輪を用いた移動方法は?」

「それは創造主の力を基にしておりますので、現在の神の許可など不要なのです。ただ、創造主の力も時を経るごとに弱まってきておりますので、実は本来であれば既にあの方法も不可能なのです」

「では、何故先程成功したのですか? この空間で行使したからでしょうか?」

 もしもそうであれば、外では使えないという事になる。それでもヒヅキには何の問題もないのだが、一応確認の為に問い返しておいた。

「いえ。あれはヒヅキ様であればこそです」

「どういう意味ですか?」

「ヒヅキ様は光属性への適正値が非常に高く、それこそ衰えていたはずの創造主の力が何代か前に戻ったように適応しているようです。ですので、限定的ではありましたが、瞬間移動を可能にしたので御座います。無論、ヒヅキ様であれば外でも使用出来る事でしょう」

 男の話に頷きつつ、何故自分がそんなに適性が高いのかと疑問に思う。しかし、そうだと言われれば、そうかと思うしかない。適性の高い低いの理由なんて解るはずもないのだから。それこそ、創造主とやら本人に訊いてみるほかないだろう。

 それでも何か引っ掛かるヒヅキだが、それが何かは考えてみても解らない。

「それは神の目に触れるのでは?」

「はい。御懸念通りかと」

「………………」

「しかし、今更かと」

「……それはそうですが」

 認めたくないと言うように、ヒヅキは男の言葉に苦々しくそう口にする。

「あれだけ監視されているのですから、今更それを気にしたところで手遅れでしょう」

 男が言っているのはウィンディーネとフォルトゥナの事だろう。特にウィンディーネは、何だかんだといっても神の使い走りのような存在らしいので、近くで神が見ているようなモノだ。フォルトゥナに関しても結局は神の人形なので、普段は別にしても、その気になればいくらでも利用可能な存在であった。

 そんな二人を連れて旅をしているのだ、そもそも神への秘密も何もあったものではないだろう。

 不本意なその結果に、ヒヅキは不機嫌そうに口の端を歪めるが、事実なので何も言い返しはしなかった。

 ヒヅキは困ったように軽く頭を掻いて息を吐き出す。それで気持ちを切り替えると、別の事を男に問い掛ける。

「神は空間を支配しているという事は、別次元も神の管轄なのですか?」

「別次元?」

 ヒヅキの問いに、男ははてと首を傾げる。そのまま少し考えて、ヒヅキが何について問い掛けたのか理解したのか、少し顔を上げた。

「……ああいえ、それでしたら誰の管轄という訳でもありません。あれは世界のゴミのようなモノですので、誰かが所有しているというものでもなく、ただ世界を漂っているだけですから」

「なるほど。それで、無数にその別次元は存在すると聞きましたが、本当ですか?」

「はい。主に世界が蓄えていた時が崩壊と共に散らばったのが、ヒヅキ様の仰います別次元ですので」

「そうなんですね。それに干渉することは可能ですか?」

「可能ではありますが、現在のヒヅキ様の扱える魔法では難しいでしょう」

「干渉する魔法が存在するのですか?」

「はい。そもそも唯一その別次元を管理していたといえるのが創造主ですので、その力を行使出来るのでしたら可能かと」

「なるほど。それはどんな魔法なのですか?」

「………………いえ、そもそも干渉するのに魔法は必要ありません。必要なのは創造主の力。つまりは創造主自身の魔力です」

「個人の魔力……それは他人には行使不可能では?」

「はい。通常であれば、いくら力を継承した者といえども、それを扱う力は別の力。なので、別次元への干渉は不可能でしょう。しかし、ヒヅキ様は創造主の力への適正が異様に高いご様子。であれば、同じ力を行使出来る可能性はあるかと」

 男の言葉に、ヒヅキは難しい顔をする。

 何故なら仮にではあるが、もしもそれが事実であるとすれば、それはもうヒヅキではなく創造主本人と言えるのではないだろうか? そんな考えが浮かんでしまったのだから。

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