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残響114

 子どもの歩く速さぐらいにまで速度を抑えられた光球が、そのまま吸い込まれるように光の輪を通過していく。

 目の前に設置していた光の輪に吸い込まれた光球は、次の瞬間には数メートル離れた場所に設置していた光の輪を通過して姿を現す。

 眼前に設置した光の輪を通って、離れた場所に現れたその間は1秒と無い。まさに一瞬の出来事であった。

 離れた場所に現れた光球が本当に同じ物かどうかは分からないが、普通の光球であればまだしも、魔砲の弾である光球はヒヅキ以外には扱えない魔法。それが確かに魔砲の弾である光球である事はヒヅキには解るので、結果的には同じ物であるのは確かなのだろう。

 であれば、実験は成功した事になる。今回の実験は、男が説明した魔砲運用方法のひとつを試してみただけなのだが、その運用方法というのが、光の輪を使った2点間の移動法。つまりは光の輪を用いた瞬間移動であった。

 限定的とはいえ、それは伝説級の魔法ではあるのだが、光の輪を用いる事でそれが可能だと男にあっさりと説明されて、ヒヅキはこうして試してみたという訳である。

 因みに、光の輪を通れるのは光の輪を現出させたのと同じ行使者が現出させた光球だけらしい。試しにヒヅキが光の輪に手を入れてみても何も反応は無かった。そもそもこの光の輪が光球にしか作用しないらしい。

 光の輪は光球にしか作用しないので、光の輪を何かが通過したとしても問題はない。その代り光球には作用するので、光の輪間の移動は一方通行ではないようだ。それを証明するように、離れた場所に現れた光球を、出てきた光の輪に戻すように通してみると、眼前の光の輪を通って近くに戻ってきた。

 確かに男の説明通りだと納得したところで、ヒヅキは男に質問する。

「質問なのですが、この光球が向こう側で爆発した場合、それは光の輪を通ってこちら側にも影響がありますか?」

「それをする事も可能ではありますが、意図的に魔法に手を加えない限りは問題ありません。仮に離れた場所に設置した光の輪の近くでその弾を爆破したとしましても、光の輪を通って爆破がもうひとつの光の輪から出てくるという事はありませんので、御安心ください」

「ふむ。なるほど。ありがとうございます」

 考えるように顎に数秒手を置いたヒヅキは、男に礼を言う。

 それに恐縮そうに頭を下げた男だが、ヒヅキは既にそちらへの興味は失せていたので、その姿は視界の端に捉えられただけ。

(瞬間移動か。光の輪を用いた限定的な物ではあるが、出来るものなのだな)

 その存在にも驚きはしたが、それ以上に自分でそれが可能だという事にヒヅキの意識は多くが割かれていた。それぐらいの衝撃なのだが、伝説とまで謳われる魔法なのだから、それも納得出来る反応だった。むしろほとんど表に出さずに驚いているヒヅキの方がおかしいのだろう。

 残念ながら光球以外では瞬間移動は再現不可能らしいが、それでも十分過ぎる成果だった。

 これでヒヅキの戦闘の幅は広がった訳だが、相手はスキアである以上、使い所はあまりないかもしれない。またスキアの大群を相手にするという事はもうないであろうし。

「しかし、本当に瞬間移動が出来るとは思いませんでした。瞬間移動などおとぎ話の中ばかりだと思っていましたから」

 あまりにも驚いたので、ヒヅキは教えてくれた男に呟くようにそう告げた。実際、男の話を聞いてもヒヅキには半信半疑で、こうして危険を承知で実験したぐらいなのだから。

 そのヒヅキの呟きを耳にした男は、然もありなんとばかりに深く何度か頷くと、困ったように口を開く。

「そうで御座いますね。今や空間を支配しているのは現在の神ですからね。その神が許可を出さぬ以上、通常の手段では空間を跳ぶ事など不可能でありましょう」

「え?」

 その男の呟きに、ヒヅキは驚いて呆けたような声を出した。

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