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残響105

「そうですか。では、その創造主の力とやらを持つ者が早く現れるといいですね」

 ヒヅキが一縷の望みにかけてそう返してみると、男はにこりと嬉しそうに、待ち望んでいたかのようにいい笑みを浮かべる。それを見て、ヒヅキはああやはりと思いながらも、こんなのばかりだなと少々哀しくなってきた。

 しかし嘆いてばかりもいられないので、ヒヅキは気持ちを切り替えることにする。

「はい。ですが、もうその方はこうして目の前に現れてくださいました」

 そうは思うも、男の言葉に思わず光の剣に力を籠めてしまったのはしょうがない事だろう。それでも男は平然としていたが。

「私がその創造主の力を持つ者だと?」

「はい。そうで御座います」

「………………」

 男の肯定に、ヒヅキは難しい顔を浮かべる。覚悟はしていても歓迎など出来ようはずもない。

 それでも相手がそうだと言うのであれば、それを受け入れたうえで、それがどういった力なのか訊き出す必要があるだろう。もしかしたら有用な力かもしれない。

(いや、こんな場所や存在を生み出すような相手だ、その力が軽い訳がないか)

 ヒヅキはそう思い直す。今は力が少しでも欲しかった。それが強大な力だというのであれば、むしろ歓迎すべきだろう。

 人間諦めが肝心。誰が言ったか知らないが、なるほどそうだとヒヅキは納得する。だが、諦める事と面倒な事は別問題であるのは言うまでもない。それでもまずは話を聞く事が先決だろう。

「それで、その創造主というのは一体何者で?」

「創造主は創造主ですが、そうですね……貴方に分かりやすくお伝えするのでしたら、神でしょうか」

「神?」

 男の返答に、ヒヅキは胡散臭そうな目を向ける。だが、それもしょうがないだろう。現在ヒヅキは神を敵と定めているうえに、神の所業にはろくなモノがないのだから、ヒヅキが神という存在で思い描くものは酷いものばかり。

 それを察したようで、男はやや苦笑交じりに説明を始めた。

「ええ、神です。ですが、貴方が思い描く神とは少々別口で御座います」

「………………どういう意味ですか?」

 男性の言いように、ヒヅキは口調を少し鋭いものに変える。

「現在神と名乗っているのは、本来の神の抜け殻です」

「神の抜け殻?」

 何を言っているんだこいつとでも言いたげに眉を動かしたヒヅキに、男は困ったように笑みを浮かべた。

「詳細にお伝えすれば説明が難しいのですが、出来るだけ簡潔に説明しますと、この世界にはこの世界を創った神が居りました。しかし、創造に力を使い過ぎた神は三柱の神を創り、その神々に後事を託して休む事にしました。それからというもの、この世界は三柱の神にて管理されるようになりました。そこまではよかったのですが、時代が進むと神々はいがみ合うようになってしまい、果てには別の存在に三柱の神ごと倒されてしまいました。その三柱の神を倒したのが、現在の神。そしてその正体こそは、創造の神の抜け殻なのです」

「………………」

 その続きを待つヒヅキだが、男は得意げな顔をするだけで続きを話し出す様子は無い。どうやら先程の説明で話は終わりのようだ。

 それを察したヒヅキは、何とも言えない表情を浮かべる。それと共に、おそらく目の前の男は説明が下手なのだなと心の中でひっそりと付け加えた。

「それで神の抜け殻というのは………………神は脱皮でもするのですか?」

 どう問おうかと考えたヒヅキだが、ヒヅキ自身も説明が上手くないのでどう問えばいいのか困り、そんな事を口にしていた。口にした後、ヒヅキは自分の馬鹿さ加減に思わず頭を抱えたくなった。

 しかし、1度口にした言葉を引っ込める事など出来ようはずもないので、ヒヅキは諦めてその事を気にしないようにしながら返答を待つ事にした。何にせよ、これで抜け殻の意味が分かるだろうと考えながら。

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