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残響103

 では蝋燭の方に秘密が在るのかと思うも、そちらも普通の蝋燭。

 蝋燭にしては大きいとは思うが、魔法道具ではないようだ。

 だが、普通の燭台と蝋燭ではないのは、観察の結果判っている。未だに蝋燭の長さが変わっていないので、普通ではないだろう。

 魔法道具ではないのは感知魔法で調べたが、しかしどうも、ヒヅキの鋭敏な感覚に引っかかるものがあった。

 何だろうかと首を傾げた後、もう一度跳躍して燭台と蝋燭を調べてみる。

「……………………」

 何度も何度もその場で跳躍しながら調べた結果、どうやら燭台と蝋燭に何かしらの魔法が掛かっていることが判った。それがどんな魔法かは不明だが、通常使われるような魔法ではないだろう。

 それにもう少し調べてみると、どうも火の方にも魔法が掛けられているようだ。だが、別に魔法の火という訳ではないようで、ヒヅキには益々よく解らなかった。

 ヒヅキは魔法に精通している訳ではないので、いくら考えても解らないモノは解らない。なので、諦めて先へ進む事にする。

 しばらく通路を歩くも、何処まで行っても誰も居ない。生き物も居なければ、明かり以外は通路に何も無い。

 くねくねと右に左にと曲線を描く通路なので、どれだけ移動したのかは解らない。もしかしたら同じ場所をグルグル回っているだけという可能性もある。

 通路を形成している壁に天井に床は、どうやら全て魔法が掛けられているようで、おそらく門同様の強度なのだろう。

 周囲を観察しながら通路に沿って歩いていたヒヅキは、あまりにも何も無いので、光の剣を現出させて試しに壁を斬ってみる。すると、門の時同様に手応えなくするりと壁が光の剣を呑み込む。

 そのまま移動させても同様で、引き抜く際も何の抵抗も感じなかった。そして、光の剣が通ったというのに壁に傷は一切ない。

 もう何ヵ所か同様の事を試してみたが、結果は同じだったので、他も同様だろうと考えたヒヅキは、無駄な事は止めることにする。光の剣では壁の上部に設置してある燭台ですら斬る事が出来なかったのだから。

 それから大人しく通路を進むと、少しずつ空気が変わっていくのを肌で感じたヒヅキは、そろそろ終点だろうかと警戒する。

 どことなく緊張したような張り詰めた空気に変わっていくが、その空気もピリピリとした嫌な感じではなく、そわそわとしたような浮ついたもののように思える。

 ヒヅキは警戒しながらも、そんな空気を不思議に思いながら通路を進んでいく。

 それからも通路を進み、空気が完全に変わったところで終点が見えてきた。

(扉か。さて、何が出るのやら)

 通路の先に両開きの扉が見えてくる。飾り気のない扉だが、色合い的におそらく鉄で出来ているのだろう。

 そこに扉があるということは、その先はおそらく部屋だ。そこに誰かが居るのか、はたまた何かが置かれているのかは不明だが、それでも新しい変化に違いはあるまい。

 ヒヅキは扉の前に到着すると、僅かな緊張を抱きながら扉に手を掛ける。中の様子を窺おうとしたが、感知魔法が制限されていてはそれも上手くはいかなかった。

 なのでヒヅキは意を決して扉に手を押しあてる。扉には取っ手のような部分が無かったので、そのままゆっくりと力を籠めて扉を押し開くと、ガコンという僅かに重い音を響かせて鉄の扉は開いていく。

 想像以上に重たい扉が開き、その隙間から中の様子が少し見えてくる。その隙間から中の様子を覗いてみると、確かに中は部屋のようだが、何も無い部屋だった。唯一大きな赤い絨毯が床に敷いてあるだけ。

 それを確認後、更に力を籠めて扉を開き、やっと人一人分が通過できるだけ扉が開いた。

 それだけ開けば十分なので、少し腕に込めていた力を抜く。どうやら力を抜いた瞬間に勝手に扉が閉まるような仕掛けは無いようだ。

 もう少し力を抜いて扉が独りでに閉まらないのを確認したヒヅキは、開けた隙間からするりと中へと入る。

 部屋の中に入ったヒヅキは、立ち止まって部屋の中を見渡す。どうやら絨毯以外何も無い部屋には、誰も居ないようだ。それを確認したところで、罠がないかの確認も始めた。

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