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残響102

 さて、ではどうするかとヒヅキは思案する。内外を隔離する見えない壁がある以上、先程までの、とりあえず少し探ってみよう程度の軽い気持ちでは望めなくなってしまった。

 しかし、知らなかったとはいえ、透明な壁を越えて中へと入ったヒヅキだが、その時は特に何かがあるという事はなかった。

 そもそもからして、何故ヒヅキだけは中に入れたのかという疑問が生じるが、それに答えられる者は居ない。

 それについては不明ではあるが、それでもヒヅキならば先へと進めるという事は確実だろう。なにせ中に入れるのだから。

 少し考えたヒヅキは、通路の奥の様子を探ってみる事にする。やはり気になるというのもあるが、先程中に入った時も感じた通り、中で嫌な予感がしなかったというのも大きいだろう。

 中に入る事をフォルトゥナに伝えたヒヅキは、心配そうにするフォルトゥナを置いて再度中へと入る。

 透明な壁の先は変わらず静寂が支配していて、入った瞬間襲われるという事はなさそうだ。というか、魔物などの気配は感じない。感知魔法はほとんど機能せず、感知出来ても肉眼よりも範囲が狭い。

(まるでホーンに在った洞窟のようだな)

 女性の剣が封印されていた洞窟を思い出したヒヅキだが、あちらは神の影響で感知魔法の性能が制限されていたが、ここはその時に感じた嫌な感じは一切ないので、それとは違うだろう。

 では何かと問われてもヒヅキは答えられないが、それでも原因が悪いものとは思えなかった。

 ヒヅキは少し進んだところで振り返る。入り口ではフォルトゥナがどうにか透明な壁を突破出来ないかとしているようだが、上手くいっていないようだ。

 そんなフォルトゥナの隣には、久しぶりに姿を見たウィンディーネが難しい顔で立っていた。どうやらウィンディーネも透明な壁は越えられないらしい。

 ただそれだけだが、ヒヅキにとってそれは朗報だ。現在ヒヅキの周囲にはフォルトゥナもウィンディーネも居ない。女性については所在不明なのでそれは措いておくとして、現在ヒヅキはかなり久しぶりの一人という事になる。

 しかも向こうからこちらは見えないという素晴らしい機能を備えているので、それに気がついたヒヅキは、少し気分が良くなり、この場所に対する好感が増した。このまま何処かから出ていきたいぐらいだが、それは出来ない。仮に別の場所から出られたとしても、フォルトゥナの感知範囲は広いので直ぐに察知されるだけだろう。

 通路を進み、直ぐに曲がり角なので入り口の様子が見えなくなる。曲がった先では、壁に設けられた燭台の上で頼りなさげに揺れている蝋燭の火があった。

 それを見て、やはりここには管理者が居るのかと思いながらも、ヒヅキは通路を進む。

 通路を進みながら周囲を観察したヒヅキは、疑問を覚える。

(蝋燭の長さがどれも同じ、それでいて減っているのかは怪しいものだ)

 その蝋燭が魔法道具だという可能性は低そうだが、それでも気になったヒヅキは、近くの燭台を観察してみる。流石に高さがあるので手に取る事は難しいが、それでも見詰め続ける事は出来る。

「……………………」

 静寂な時が過ぎる。ヒヅキは蝋燭をジッと見詰めて時を過ごすも、一向に減る様子がない。蝋燭は直ぐに変化するものではないが、それでももう数10分ほどは飽きもせず眺めている。蝋燭の元々の長さは覚えているので、変化していないのが分かった。

 それに蝋の一筋も流れないというのも奇妙なもの。おそらくだが、この蝋燭は減らずにずっと明かりを灯しているのだろう。だが、この蝋燭はおそらく魔法道具ではない。

 ヒヅキは燭台に手が届かないかと壁に手をついてつま先立ちになってみるも、その状態でどれだけ手を伸ばしてみても届きそうもない。

 身体強化を施して跳べば届くだろうが、それは何だか嫌な予感がした。せめて感知魔法の範囲が届けばいいのだが、それはギリギリ届いていない。

 少し考えたヒヅキは、その場で普通に跳んでみる。無論それで燭台に手が届くわけではないが、その代り僅かにだが感知魔法が燭台に届く。

 身体強化も何も施していない普通の跳躍なので、感知魔法が届くのは一瞬ではあったが、それだけあれば解ることもある。

 幾度もそうして感知魔法で燭台を調べてみた結果、やはり燭台は魔法道具という訳ではなさそうであった。

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