表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
884/1509

残響98

 そうしてヒヅキが思案していると、壁を凝視していたフォルトゥナが動き、様々な属性の魔法を壁へと放ち始める。

 色とりどりの光が地下空間を染め上げ、耳を覆いたくなるような轟音が響いていく。

 近くに居たヒヅキも、あまりに大きな音に耳を塞ぐが、その音の最も近くに居るはずのフォルトゥナは平然としたものであった。

 その様子に、ヒヅキは術者は平気なのだろうかと思ったものの、そんな話は見た事も聞いた事もない。ヒヅキの使う魔法の中には大きな爆発を引き起こす魔砲というモノが在るが、あれは正確には目を焼くほどの光を現出させて、触れた瞬間に蒸発するほどの熱で対象を焼いているだけ。なので、魔砲自体は大きな音はほとんど発生しない。そこに大きな音を出す何かがない限りは、大きな音とは無縁な魔法だ。

 他に使う魔法は光の剣や身体強化、治癒ぐらいなので、魔法が発生させた大きな音が術者にも影響するのかどうかは知らなかった。図書館などで調べた限りはそんな記述は無かったし、フォルトゥナにも習っていない。

 であれば、フォルトゥナ自身が轟音をどうにかする方法を採っているのだろう。耳栓など意味をなさないだろうから、おそらく何かしらの魔法であろうが。

 ヒヅキは目を焼かれないように背けながら耳を塞ぎ、念のために目も瞑っている。それでも光の瞬きをまぶた越しに認識しているし、塞いだ耳に轟音が届いている。

 そんな状況でもヒヅキは引き続き思案すると、もしもフォルトゥナの攻撃に晒されても門が無傷であれば、調べた後に光の剣で試してみる事に決めた。

 そう決めた後、しばらく続いた轟音と閃光が止み、ヒヅキは薄っすらと目を開けた後に問題なさそうだと判断して、塞いでいた耳を開放しながら振り返る。

 振り返った先には当然フォルトゥナが居るが、その奥に在る門は健在。周囲の壁はかなり削られているので、それが先程の魔法の暴雨がどれほど凄まじかったかを教えてくれている。周囲が削れたことで門が浮き彫りになったが、門のすぐ後ろの壁も削れていない所を見るに、その先は通路のようだ。

(それにしても、あれだけの魔法を放ってフォルトゥナの魔力は然して減りもしていないか、面倒な相手だ)

 ヒヅキは魔力を視る事は出来ないが、感じることは出来る。それによりかなり大まかながら相手の魔力量を測る事が出来た。それによって調べてみたところ、フォルトゥナの魔力量は魔法を放つ前とほとんど変わっていないと思われる。

 驚くことにあれだけの魔法を放っても、フォルトゥナにとっては準備運動にしかならないらしい。いや、それにもなっているか怪しいが。

 それを感じ取った後、自分だったらどうだろうかとヒヅキは考える、仮に同じようにヒヅキにも魔法が使えたとしたら、流石に魔力枯渇とまではいかないが、それでも4分の1から3分の1程度は減っていた可能性がある。

 もっとも、これは同じように魔法が使ったとしたらという想定なので、もしもヒヅキが同じ魔法を行使出来るのだとしたら、同じ威力の同じ魔法でも消費魔力量は格段に少ないだろう。

 それでも総保有魔力量の1割以上は魔力を消耗するだろうから、損耗率で見ればフォルトゥナに負ける。つまりはヒヅキが多彩な魔法を使えてフォルトゥナと魔法戦を繰り広げたところで、結局はヒヅキが先に魔力が尽きて敗北してしまうと簡単に予想出来る.

 ヒヅキにとってフォルトゥナは敵になる可能性のある存在なので、その結果は嬉しくないものであった。想定通りの魔法戦をする訳ではないが、それでも脅威なことに変わりはない。ただでさえ勝率が極めて低かったというのに、それを更に下方修正した方がいいというのは正直笑えない。

 舌を打ちたい気持ちを抑えつつ、ヒヅキは内心で苦い顔を浮かべる。

 しかしそれをフォルトゥナに悟らせる事なく、ヒヅキは調査の為に門の前まで移動した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ