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残響78

 地下への穴を掘る場所は、観察した事で判明したスキアの行動範囲から十分に距離を取ったところ。地下街まで距離はあるが、ヒヅキがフォルトゥナにその事を訊いてみると、問題ないとの答えが返ってきた。

 実際はどうかはさておき、フォルトゥナ自身がそう言うのであれば問題ないかとヒヅキは判断すると、地下道を掘るのを頼んだ。

 フォルトゥナはやる気をみなぎらせながら地下道を掘っていく。やり方は地下砦の時と同じ。途中で入り口を塞ぐ予定も同じ。

(………………ふむ)

 だったのだが、ヒヅキはフォルトゥナがどんどんと造っていく地下道を歩きながら考え、思いついた事をフォルトゥナに問い掛ける。

『フォルトゥナ。入り口を塞いだ後、地下街に居ながらその塞いだ入り口を開けることは出来る?』

『地下街は全域を感知可能なので、それは可能です』

『そうか』

 地上ではなく同じ地下からでも地下街の全容を把握出来ていないヒヅキ。フォルトゥナとの力量さについては考えるだけ無駄だろう。なのでその事は横に措き、今は先程の考えをフォルトゥナに伝える事にした。

『であれば、このまま予定通りに入り口の穴を一旦塞ぎ、地下街に到着後に塞いでいた穴をまた開けてくれ』

『畏まりました』

『今の状況でこんな風に侵入するんだ、どうせドワーフとは交渉出来ないだろうから、スキアを使って地下街を混乱に貶めた後に調べるとしよう。その方が楽そうだ』

 それに混乱の最中に大事な物を避難させようとするかもしれないので、探し物も楽になるかもしれない。

 地下街は広いうえに結構な数が暮らしているので、動きやすく動き難くもある。しかし数が多いという事は、スキアを内に引き込めば混乱を惹起(じゃっき)するのは容易いという事でもあろう。ドワーフがどうなろうとヒヅキの知った事ではない。

「……………………」

 とはいえ、思うところが全くない訳ではない。これではコズスィと同じだなと考えてしまうが、既に世界の滅亡は確定しているので、結局は遅いか早いかの違いでしかない。もう何もかもが手遅れだ。

 しかしそれとは別に、思った以上に何も感じないので、ヒヅキはやはり酷くなってきているなと僅かに顔を顰める。記憶もだが、感情の方もどんどんと侵食されているようだ。

 根本的な原因ははっきりとしないが、それでも中の存在が原因なのはヒヅキにも解る。そしてそれがどうしようもない事も。

(勘、いや予感か? 俺の中に居る英雄達を排除するだけならば、おそらくは可能だろう。確率がどれぐらいなのかは分からないが、それでもない訳ではない。しかしその場合、俺もそこで終わるのだろう。ここまで蝕まれてやっと解った。とはいえまだ何となくだが………………俺は多分、もう死んでいるのだろう。完全にではないが、ほぼ確実に。それが解るから、この感じも理解出来る。そして、完全に何も思わなくなった時点で、本当の意味で俺が死んだという事なのだろう)

 諦観とか悟りだとかとは違う、別の凪に思考が包まれる。今からしようとしている事に対して悪いなとは僅かに考えるが、考えるだけでしかない。それはこの凪が原因なのだろう。そしてこの凪の正体は……という事なのだろう。

 それを知っても、ヒヅキは口元に微かな苦笑を浮かべるだけ。

 考えること止めることはしないが、だがそれを嘆いても拒絶しても意味はない。既に起こった事だ、受け入れるほかない。

 ヒヅキは自身にそう言い聞かせると、色々と籠った息を小さく吐き出す。

 余計な事を考えるのはやめておこうと思ったところで、フォルトゥナが地下街の外壁に穴を開ける。

 結構長い間考えていたのだなとそれで気づき、意識を前に向ける。

 ヒヅキが地下街に入ったところで、フォルトゥナがいつの間にか塞いでいた地下道の入り口を再度開けた。これで時間が経てば地下砦同様に、入り口を見つけたスキアが侵入してくる事だろう。

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