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残響69

 魔法の修練を行いながらの移動速度は、エイン達が居た時よりも遅い。休憩も多めに取るので、足を止める頻度も上がる。

 それでもヒヅキは気にせずデーフ目指してのんびりと進む。魔法の方は、光の魔法や過去視に比べれば格段に扱いやすいので、苦戦はしても不可能というほどではない。

 実際ヒヅキは、一般的な魔法の威力と魔力消費量にかなり近づいてきている。それだけみれば至って凡庸な結果なのだが、その魔法の中身はフォルトゥナでさえ未だに辿り着けていないほどに複雑な造りになっていた。

 その無駄に高度な技術でもって普通の魔法を再現しようとしているヒヅキ。技術の無駄遣いではあるが、本人は至って真面目である。まぁ、この経験が光魔法や過去視での魔力運用や効率化に多少は役立つのは確かだが、それでも本当に多少だ。

 そもそもの話、普通の魔法と光の魔法は同じ魔法でも別物といってもいいぐらいに異なる。それこそ同じ生き物だからと犬を指して人間と同じだと言っている様なものだ。

 ヒヅキ自身としては暇つぶし程度にしか捉えていないので、それでも問題はないのだが。

(むむむ。意外と魔法の構築というのは集中力が必要だな。これはいい気分転換になるな)

 魔法の構成を弄っていると、ヒヅキは魔法に憧れていた童心に返った様な楽しさを抱きはするが、それもそれほど強くはない。

 ある程度魔法が完成してしまえば、そもそも興味も失ってしまう。デーフに到着する前には一応は形になってしまい、ヒヅキは魔法に興味を失ってしまった。その為ヒヅキの中で魔法は、知識としてあれば十分な代物にまで落ちてしまった。

(しかし、やはり保有魔力量の問題が大きいな。光魔法や過去視をまともに使えばすぐに魔力が枯渇してしまうというのはどうにかならないものか……)

 魔法を扱ってみて、その事が深刻だというのが改めて浮き彫りになり、ヒヅキはどうしたものかと思案してみるも、やはり答えは出ない。現状は魔力水頼みでしかないが、それでも魔力水を手に入れる前よりはかなりマシになった方。

 デーフから少し離れた場所で足を止めるも、答えは出ない。とりあえず目的の場所に到着したので、その考えは横に措く。

 まずは感知魔法で地下と地上の様子を確認する。修練によって感知範囲が拡大したので、地下砦程度であれば何とか全容が把握出来る。

(相変わらず横穴を掘っているのだな)

 前回来た時よりは少し進んでいる様ではあるが、それでも地下街まではかなり遠い。今の速度では、地下街まで横穴を通すのに何年掛かる事やら。

 地上部分は相変わらずスキアが跋扈している。地下に反応しているので、地上部分に釘付けだ。それに横穴の上にも移動しているので、仮にこのまま地下街まで貫通させたとしたら、地下街のスキアの数が増す事になるだろう。

(まぁ、地下に閉じこもっている間は安全だろうが………………)

 地下に籠る事でスキアの脅威は去る事だろう。しかしヒヅキは知っている、地下には地下を領分としている何かが存在している事を。

(それが敵か味方かは不明だが、ウィンディーネのことを考慮すれば、神には逆らえないだろう。つまりは、地下に籠ったところで時間の問題でしかないという訳だ。世界の破滅とどちらが早く訪れるのだろうか)

 一瞬何とも言えない微妙な表情を僅かに浮かべたヒヅキは、小さく息を吐く。ひとつ、思い出したのだ。

(遺跡探索の最後。凍てつく地下のあれは神が行ったとウィンディーネは言っていたが、神が直接手を下したとは言っていない。であれば、もしかしたらあれが地下を支配している何かの仕業なのかもしれないな)

 まだ地下は安全であるとはいえ、結局逃げ道など無いのだろう。そう思うも、ヒヅキは記憶の何処かで安全な場所というモノが在ると聞いたような気がした。しかし、いくら考えてみてもそれが何だったのかまでは思い出せそうにはなかった。

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