残響63
デーフからグルードンまでは結構な距離があり、鉱山を迂回しながら10数日掛けてやっと到着した。
グルードンが在る場所は平原のど真ん中で、周辺には何もない。デーフと同じくグルードンも破壊されていたので、平原には瓦礫の山が在るだけ。
その瓦礫の山からは背の高い草が割れた床から生えており、そこら中で風に揺れていた。
ヒヅキはそんな光景を確かめながらグルードンが在った場所に足を踏み入れる。
見渡した限り街の規模は結構なモノだったようだが、それに比べて防壁は跡を見る限り大したものではなかったようだ。
街中は瓦礫で溢れていて詳細は分からないが、それでも僅かに残っている建物や道の基礎部分を見るに、しっかりと計画されて造られた街並みのような印象を受ける。
落ちている物は木や石の他にも金属片なんかもそこそこ見つけられた。発見した量的には、流石はドワーフの国と言っていいかは微妙なところだが。
ヒヅキ達はとりあえず手近なところから手を付けていく。気になった場所の邪魔な瓦礫はどかしては、その下を調べる。そんな事を繰り返しながらグルードンだった場所を歩いていく。
交易の街として繁栄していたというだけに、街の規模はデーフの何倍も在る。もしかしたら10倍ぐらいは在るのかもしれない。
それほどの規模だけに、見て回るだけでも一苦労。
フォルトゥナの話では周辺にスキアを確認していないらしいので、いきなり襲われるという可能性は低いだろう。それでも警戒はするが、そこまで気を張る必要はない。
ヒヅキは感知魔法の規模をかなり縮小すると、代わりに過去視を使用してみる。そうすると、幾つかの幻影の姿が現れた。
幻影の動きは、今まで砦跡などで視てきたモノと変わらず何かを探しているような動き。それが誰かは判らないが、破壊された街を漁りに来た者達であるのは間違いないだろう。
他にはと見回してみるも、他はスキアと思われる幻影がちらほら確認出来たぐらいであった。
(ここの辺にもスキアが来るという事だろうか?)
そのスキアの幻影がいつの幻影かまでは判らないが、それでもちらほら確認出来るという事は、ここで休憩か何かをしている個体でも居るのだろう。
そう考えたところで過去視を止めると、いつスキアに襲われても即座に対応出来るように周辺の警戒を行う。
数日そうやって周辺を警戒しながら探索を行うと、一部の瓦礫をフォルトゥナに魔法でどかしてもらい、地面を平らにする。その後に腰を下ろして休憩を行う。
休憩中に食事や魔力水の補充を済ませると、過去視の制御や魔鉱石の精製など、やり残していた事に少し手をつけて進めておく。
そうして時間を費やすと、休憩を終えて探索を再開する。
デーフとグルードンと探索しているが、今のところ成果はない。特に変わった物も見つけていないので、収穫は無いに等しい。
交渉材料とは言わないまでも何かしら使えそうな発見もないので、ドワーフと接触するとしたらどうしようかと思いながら探索を続ける。
ヒヅキはグルードンの探索を終えたらスキアがこの国で最も集中している場所の様子でも探ってみようかと考え、それよりも直接自分達で乗り込んでもいいかもなとも思った。
(大きい街であれば、水晶の欠片について何か知っている可能性も在るからな。魔法道具も在るだろうし、足を運んでみるのは意味があるかもしれないが)
面倒だと思いながらも、さてどうしたものかと思案しながらグルードンを調べていく。めぼしい物など全く以って見つからないが、スキアが近くには来ないので平和なものだ。
それから更に数日探索したところで、また休憩を挿む。今回は魔力水を飲んだり水筒に魔力水を補充するだけで、食事まではしなかった。
その後に細々とした作業を行うと、また作業を再開させる。
そんな事をもう何度か繰り返したところで、ヒヅキ達はグルードンの探索を終えるのだった。




