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残響62

 そうしてフォルトゥナに先導されて進むこと数日。何も変わった事もなく南下したところで、目的地のひとつである鉱夫達の町デーフだった場所に到着した。

(ただの瓦礫の山だな。防壁とかもなかったようだ。在っても木の柵程度しかなかったのだろう)

 建物の跡は確認出来るが、どれだけ探しても防壁の跡の様なものは確認出来ない。なので、ヒヅキはそう推察しながら、崩壊した町の中に足を踏み入れる。

 町の中は完全にスキアの手で潰されており、当然無事な建物はひとつとして無い。瓦礫の山がそこら中に散乱しているが、僅かでも残っている部分さえも見当たらないほど。

 火災の跡もところどころ確認出来るが、やはり死体はひとつも残ってはいない。少し見渡した限り、骨の1本さえ転がっていない。

 それはまるで、この町デーフに深い怨念を持つ者の仕業のように徹底した破壊ではあるも、スキアにそんな強い感情はないだろうから、単に文明を破壊している工程のひとつに過ぎないだろう。

(木造が目立つか。すぐそこに鉱山といっても、流石に金属で出来ている訳ではないんだな)

 転がっている物が木よりも石の方が多い事に気がついたヒヅキは、慎重に進みながらも、適当な場所で足を止めて掘り返してみる。

 しかし、どれだけ掘り返してみても何も無い。堆積している量もそこそこ多いので、掘り返すだけでも一苦労のようだ。

 意外と広いデーフを歩き回りながら数日探索してみた後、ヒヅキは休憩する為に軽く均すように片づけて、そこに腰掛けた。

 腰掛けた後に水筒の中の魔力水を飲み干すと、空間収納から取り出した水瓶から魔力水を注ぎ、水筒の中身を補充する。その間にフォルトゥナは保存食の用意を始めていた。

 フォルトゥナが用意した保存食を口にしながら、ヒヅキは身体を休める。限界まで身体を酷使しているという訳ではないが、休憩無しでずっと移動しっぱなしでは、ヒヅキの気づかない程度の疲労が身体に蓄積していたようだった。

 食事を終えた後も、ヒヅキはそのまま休憩を続ける。眠るほどではないのだが、少し長めに休憩を取っていたほうがいいだろう。

(このままずっとゆっくり出来ればいいが、そうもいかないからな。意味は無くともここまでくれば足を止める訳にもいかないか。まずはドワーフのところで何かないか探せればいいが……やはり水晶の欠片を優先して探すべきなのだろうか?)

 謎の組織であったコズスィが壊滅した以上、現状はこれといった目的もないので、とりあえずの優先目標としてそう設定しておくべきかとヒヅキは思案する。現在でも水晶の欠片集めは一応の目的のひとつではあるが、そろそろ本格的に神に対する事を考えなければならないだろう。

(ま、今更ではあるか)

 既に世界の終焉は見え始めている頃になってそう考えるのもおかしな話だと思いながらも、ヒヅキは何処までも他人事の様に思案を続ける。

 それから少しして、十分に休息を取ったと判断したヒヅキは、立ち上がりデーフの探索を再開する。その間に聞いたフォルトゥナの話では、ここは鉱夫達の宿場町であったとはいえ鉱夫自体が結構な数が居たようなので、ただ寝て起きるだけの場所ではなかったようだ。

『うーん。こうして実際に確かめながらフォルトゥナの話を聞くに、商店も出てたという話だし、割と規模の大きな町だった訳か。まぁ、入れる者は制限されていたようだし、閉ざされた町ではあったようだけれど』

『はい。ここで商売可能な者はドワーフなのは当然としまして、その中でも国が許可を出した店に限られていたようです』

『なるほど。ドワーフの国にとって、ここで採掘できる鉱石は重要な財源でもあっただろうからね。それも当然か』

『はい。ドワーフの国においては、鉱夫は結構高い地位を持った憧れの職のひとつであったとも聞き及んでいます』

『へぇ』

 そんな会話を続けながら更に数日デーフの探索を行ったヒヅキは、そろそろいいかと思い、次の目的である交易の街グルードンを目指す事にした。

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