残響49
フォルトゥナから情報を手に入れた後、ヒヅキはコズスィの国とドワーフの国との国境辺りまで移動してみる事にする。
周囲はなだらかではあるが、国境が近いからか道が無い。いや、正確には在るのだが、今までのような奇麗に整備された道ではなく、踏み固めてその上に木の板を置いただけの簡易な道。
それで十分なのだが、今までが石で整備された道だっただけに、僅かに違和感のようなモノを覚えた。それも直ぐに消え失せたが。
周囲の土に似た色の木の板を踏みながら進んでいくと、10日ほどで大きな河に出る。ヒヅキは記憶を辿り、それがコズスィとドワーフの国との国境である事を思い出す。
対岸が見えないほどに幅の広い河。水面の流れは穏やかのように見えるが、ヒヅキの記憶では流れは速いという事だった。
何処かに橋が掛けられていたはずと、ヒヅキは周囲に目を向ける。しかし、見える範囲にはそれらしき物は見当たらない。
しかし感知魔法で河周辺を調べてみれば、離れた場所に立派な橋が掛けられているのを発見する。
ヒヅキがそちらへと移動すると、そこにはしっかりとした造りの大きな橋が在った。
威圧感を放つ重厚な造りの橋だが、飾りなどは無い実用性を追求した物。というのも、コズスィが勝手に占拠した土地が在る場所へと進軍する為に築かれた橋なので、飾り気よりも多人数が問題なく渡れるだけの実用性に重点が置かれている。
橋の近くには小規模ながらもドワーフ側の砦が築かれ、両岸で橋を護っている。ドワーフ国側の砦は大きいので、コズスィ側で何か在っても、直ぐにそれなりの数の援軍が駆けつけて来た事だろう。
ただ問題は、対岸が見えないほどの距離とその伝達手段。
これは感知魔法で調べてみると橋の途中に幾つか小規模な砦を発見したので、それで何とかしたのだろう。おそらく伝達手段もその砦を介して行っていたと思われる。
ヒヅキは橋の片端から奥の方へと目を向ける。しかし、何も確認は出来ない。橋板を舐めるように視線で見てみれば、橋の途中に砦の基盤だったのだろう部分が確認出来た。
(スキアに壊されたのか。そこの砦もだし、とりあえずスキアは砦を攻撃しているようだな)
今まで見てきた砦の惨状を思い出し、やはりスキアは破壊を好むようだなとヒヅキは結論付ける。特に文明の破壊には熱心なので、人工物である砦は破壊対象なのだろう。
しかしヒヅキは特に砦に用事もないので、まぁいいかと橋を見詰める。
(さて、折角ここまで来た訳だし、このまま橋を渡ってみるべきか。それとも1度戻って魔法道具を回収してみるべきか)
腕を組んでどうしたものかと思案したヒヅキだが、一旦引き返して魔法道具を調べてみる事にした。
そう決めると、ヒヅキはフォルトゥナにその事を伝えた後、少し距離があるので、来る時よりも速度を上げて移動していく。
休憩も無く、倍以上の速度で道を駆けていくと、地下空間が在った場所まで数日で戻ってこれた。
それから休憩がてらに地下空間を調べてみると、未だにスキアが一体徘徊していた。それがここを落としたスキアと同一個体かどうかは分からないが、他には確認出来ない。
スキア以外も確認出来ないので、そろそろスキアを排除してもいいかと思い、短い休憩を終えてヒヅキ達も地下へと下りる事にした。
フォルトゥナが造った地下への道は、スキアも通れるようにと大きめに造られているので、通るのに支障はない。
それこそ並んで下りても何の問題もないので、ヒヅキは警戒しながらも、少し速度を上げて緩やかな坂道を下っていく。
道はそこそこ長かったが、直ぐに地下空間の一層目に到着する。
感知魔法で空間を把握しているが周囲が暗かったので、念のためにと光球を現出させたヒヅキは、それを飛ばして奥の様子を確認してみる。




