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残響48

 結局のところ、ヒヅキはウィンディーネなどという神についての記述を今まで読んだことがないので、頑張っても情報の収集も満足に出来ない話である。である以上、深く考えても分かりようがない。もう少し情報が在れば別なのだろうが、ヒヅキの知るウィンディーネの情報など、共に旅をして知った程度でしかないのだ。

(今の神に創られた存在で、生命力を糧とする者。地下は管轄外で、主に水を司る。他は消えるとか、悪意があるとか、そんな事ばかりだな。それなりに上位の存在のようだが、結局は神には勝てないらしいし)

 ウィンディーネについて思い返してみても、結局何も知らないなと、ヒヅキは内心で苦笑する。

 考えても無駄な事は考えても意味がないと思考を切り替えると、気づけば明るくなっていた周囲に目を向ける。太陽の位置から考えるに、現在は昼頃か。

 それを確認したヒヅキは、結構長い時間考え込んでいたようだと驚きながらも、地下の探索は止めておく事にする。探索するにしても日を改めた方がいいだろう。

 フォルトゥナにそれを告げた後、ヒヅキはフォルトゥナに周辺にスキア以外の気配が在るかどうか尋ねる、

 それにフォルトゥナは在ると答えた後に、その場所をヒヅキに伝えた。

『ドワーフの国、ね。そこにスキアは?』

『それなりの数が確認出来ます。ドワーフ達はまだ生き残っているようです』

『ほぅ。それは凄い』

 フォルトゥナの言葉にヒヅキは嘆声を漏らす。

『しかし、どうやってスキアの侵攻を? まだスキアが居るという事は、攻めている最中という事だろう? 撃退しているという事か?』

 そう問い掛けながら、ヒヅキはドワーフについて思い出す。といってもあまり詳しい事は知らないが、鍛冶が得意で魔法装備も造っていた。それでもエルフ産のものよりは少し質が落ちたようだが。

 あとは、ドワーフは背が低いという事か。成人でも人間の子どもぐらいの背丈から大人の胸元辺りまでの高さしかないらしい。しかし、力は強い。それと髭を伸ばしているらしいという話。

 そんなドワーフだが、ヒヅキはドワーフがスキアよりも強いとは聞いた覚えがなかった。

 仮にそうだとしたら、現在覇権を握っていてもおかしくはないだろう。しかし現実は人間の国を亡ぼす事も出来ずに、エルフや人間などと睨み合いが続いていた。その隙を衝いてコズスィが国を興したのだから、軍事力は大した事ないだろう。

 そんな国が、周辺国が亡んでいる中でも生き残っているというのは驚きだろう。フォルトゥナの口ぶりから、ギリギリ持ちこたえているといった感じでもない。

『スキアが攻めている最中ではありますが、撃退は出来ていないようです』

『では、どうやって生き残っているの?』

『はい。元々ドワーフは地下に首都を構えていましたので、その入り口を塞ぐ事でスキアの侵攻を食い止めているようです』

『なるほど』

 地下に籠ればスキアは手出しが出来ない。それは先程も見たばかり。しかしその場合、かなりの数の者達を長期間養わなくてはいけない訳だが。

『ドワーフは地下に畑を造り、そこで作物を栽培させる技術を確立させております。空気穴は小さいモノが幾つも開けられており、空気を魔法道具で循環させて、離れた場所からも空気を供給しているようです』

『ふむ。それならば大丈夫なのか?』

 ドワーフの国の人口は不明だが、それでも未だに出てこないのであれば、なんとかなっているのだろう。

『現状はギリギリといった感じでしょうが、この状況が後10年ほど続けば危ういかもしれません』

『つまりはそれぐらいは問題ないと』

『おそらくですが』

『ふむ』

 ヒヅキは顎に手を当てて思案する。流石は地下に街を築いているだけあって、備蓄はしっかりしていたらしい。しかし、その10年という時が過ぎる前には世界が滅んでいるだろう。

 それでもスキアに殺されるよりは、知らずに滅びる方が幸せなのかもしれないなと、話を聞いたヒヅキは思うのだった。

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