表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
833/1509

残響47

 コズスィの者達がスキアに蹂躙されていく様を観察しながら、しかしヒヅキは何も思わない。多少は暗い愉悦が浮かぶだろうかとも一瞬考えたヒヅキだったが、どうもそんな事はないらしい。

 考えてみれば、今でも怒りは治まることなく湧いてくるのだが、それも何とか自覚できる程度。それが酷く残念なような気もしたが、そんな感情すら最早薄っぺらく、他人のモノのようだ。

 まぁそれはともかく、その結果は当然のものだろう。

 地下空間に居る戦力をかき集めてから装備を整えて、万全の状態で連携を取って何とかスキア一体と戦える可能性が出てくる程度だというのに、完全に油断していたところに奇襲を受けて各個撃破。更には現在地下空間には三体のスキアが居る。

 二体目が地下へと侵入して直ぐに三体目もやってきたのだが、一体ですら倒せない状況でスキア三体。その時点で完全に終わっていた。

 それを知った時も、ヒヅキはやはり何も思わなかった。同情も憐憫も愉悦も悔悟も何も。自分で仕組んでおいて、全てが終わっても、ああ終わったか程度の感想しか抱かなかった。

(結局は教祖も分からなかったな。居たのかどうかも分からず仕舞い。厳重に護られているような人物も見当たらなかったし)

 未だにスキアは地下の中を歩き回っているが、ヒヅキ同様に何も見つけられないようだ。

(それにしても、嬲っているのはスキアが地下に居る影響で弱っているからとも考えたが、そんな事はなかったな。他の二体のスキアは地上と変わらず対象を瞬殺していたし。という事は、探知系が弱くなるだけという事か?)

 いまいちよく分からないなと思いながらも、もう少し集中して地下空間を探ってみる。もしかしたらまだ生き残りが居るかもしれない。

 スキアも何も感知していないようなのでその可能性は低いだろうが、やるからには徹底的にやった方がいい。

 そう思ってしばらく地下を調べてみたが、生き残りは発見出来なかった。

(地下にもスキアが徘徊するようだし、ここはこの辺りでいいかもしれないな)

 地下には魔法道具があるので、それを取りに行こうかとも考えたヒヅキだが、そうするとスキアが襲ってくる可能性が高く、そうなってしまうと倒すほかなくなる。

 ヒヅキにとってスキアと戦う事は造作もない事ではあるが、念のためにもう少し地下にスキアを徘徊させておきたいヒヅキにとっては、それは避けたい事態。

(……そういえば、もしもこのまま地下への道を埋めると、スキアはどうなるのだろうか? 食事などは必要ないから大丈夫だろうが、道が無ければ地下へ下りられないのだから、道が無くなれば地下に閉じ込めておけるのだろうか? それとも、地上へは出られるのか? もしくは……地下だと能力に制限が掛かるようだし、衰弱して消滅したり?)

 さてどうなのだろうかとヒヅキは考えるも、情報が無いので分かりようがない。

 仮にウィンディーネを地下へと閉じ込めたらどうなるかを想像してみるも、おそらくは問題ないだろう。現在の地下には敵は誰も居ないのだから。その代り、餌となる存在も居ないのだが。

(名案とは言えないが、試してみたくはあるな)

 ウィンディーネの存在にほとほと困っているヒヅキはそう考えるも、当然だがスキアとウィンディーネでは別物だ。スキアでは上手くいきそうだが、ウィンディーネを地下に閉じ込めるというのは想像が出来ない。それにウィンディーネであれば、仮に地下に封じても自力で出てきそうな予感がした。

 そしておそらく、その予感は正しい。であれば、ウィンディーネを封印でもいいからどうにかする術はないというのだろうか。

(そもそも、そんな方法があればここまで苦労はしないし、あるならば、もう何かしらの手掛かりぐらいは掴めてそうなものだが)

 結局そう結論を出す事しか出来ず、ヒヅキは小さく息を吐く。これはウィンディーネ自身に尋ねてもおそらく同じだろう。神の弱点など分かりようがなかった。

 いや、そもそもスキアは神ではない。神の尖兵のようなモノではあるが、神に属するモノでも類するモノないのだから、曲がりなりにも神の末席に列するらしいウィンディーネと比べる方がおかしいのである。

 それに気づいたヒヅキは、自分は何を考えているのかと、内心で呆れたように息を吐き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ