ガーデン4
衛兵を捜すと言っても、ガーデンは広いためにすぐには見つからなかった。
「捜すと見つからないものだな」
もしかしたら、わざと人通りの多いところを避けているのも原因なのかも知れないと頭に浮かぶ。
「衛兵の詰所ってどこだろう?」
ヒヅキは辺りを見渡すも、ここがどこかもよく分かっていない状態では分かりようがなかった。
「………あれ?これは俺が迷子?」
一瞬そう考えるも、すぐにそれを否定する。
「目的地も同行人も居ないんだ、迷子ではないはずだ」
自分に言い聞かせるようにそう結論づけると、再度衛兵の姿を捜すために別の道に入ろうと建物の角を曲がろとして、そこで挙動不審な人物を複数人目撃した。
「ど、ど、どうしましょう!ここにも有りませんわ!」
地味めな服を着たあまり目立たたない格好の男たちが、シンプルながらも上質な生地の服を着た少女を中心に何やらワイのワイのと騒いでいた。
「他にまだ探しに行っていない場所は何処かありましたか?」
血の気の引いた顔で少女が周囲の男たちに問い掛ける。
「居住区画から商業や目抜通りに職人たちの住まいも探しに行きましたし、他には……えっと他には……」
男たちはわたわたとしながらも、記憶を辿るように額やこめかみなどを押さえていた。
「……やはり誰かに持っていかれたという事でしょうか?」
今にも死にそうな顔で少女はそう言葉を紡いだ。
「残念ながら可能性はあります……」
男たちの一人の言葉に、少女は立ち眩みでも起こしたかのようにふらついた。
「大丈夫ですかお嬢様!」
それに周囲の男たちが騒然となる。
(騒がしいな……)
その周囲と比べて異様な空間に、ヒヅキは少し引いていた。
少女たちが何かを探しているのは理解出来るのだが、そのどこか芝居のようなやりとりに、ヒヅキは別の意味で衛兵を捜したくなった。