残響41
単純な造りの魔法道具とはいえ、それでもまだ機能している魔法道具である。それも大部分が壊れている危うい魔法道具。それを思い出して、ヒヅキは気が緩んでいたなと引き締め直す。
それから集中して魔法道具を調べていくと、そう経たずに調べ終わる。その頃には夜になっていたが、そんなのはヒヅキには関係ない。隣ではフォルトゥナがせっせと魔鉱石の精製をしている。更に手際が良くなっていた。
調べ終わった壊れかけの魔法道具を、ヒヅキはその辺りに適当に放る。魔力を通していなければ、魔法道具も暴発はしない。例外は周囲の魔力を自動で取り込む魔法道具だが、放った魔法道具はそんな高性能な物ではなかった。
壊れかけていた魔法道具を棄てた後、もう1つの壊れかけている魔法道具を取り出す。見つけた最後の魔法道具だが、こちらもまたそこまで凝った魔法道具ではない。
それでも見つけた魔法道具の中では最も複雑な構造をしているようで、ヒヅキは1度深呼吸をして、改めて気を引き締め直す。
警戒はフォルトゥナに任せているので周囲の事を気にする必要はない。その分ヒヅキも魔法道具に集中できる。
その魔法道具は光る魔法道具らしく、都市部などで街灯に使われている魔法道具に近いモノが在る。だがこちらは周囲の魔力を取り込むような機能はなく、それほど出力も高そうではない。
それでも周囲の魔力を取り込むようにしようとした形跡は残っていたので、練習用の魔法道具なのだろう。
この魔法道具はヒヅキが見つけたので、先の2つとは発見場所は異なっていたが、それでも出所は同じなのかもしれないとヒヅキは思った。
調べている魔法道具は、魔力回路の潰れている部分が多く、何とか発光する魔法が組み込まれているのだけが分かっただけ。魔力回路が潰れている部分は罠の部分が多く、それが発動する様子もない。
魔法道具の構造は、意味のない陣が多用され、それに加えて罠の部分が潰れているだけに無駄に面倒なだけ。
それでも慎重に調べていったヒヅキは、朝方には魔法道具の調査を終える。
(…………ふむ。魔法道具について少しは理解出来てきたが、それでもここのだけではダメかもしれないな。同じ魔法道具でも、左手の義手とは様式が違うというか、細かな部分だけだが造りが違う。これは流派が違うというよりも、ここで色々な技術が混ざった影響だろうな)
どちらが良いとか悪いという話ではないが、ヒヅキとしては義手に使われている技術の方が性に合っているような気がした。
(ま、何にせよ数が足りない。この際質は問わないから、とにかく大量の魔法道具が欲しいところ)
そう考えながら、ヒヅキは調べ終えた魔法道具を棄てる。
3つの魔法道具を調べ終えると、ヒヅキは義手の点検を行う。その後に少し休憩してから移動を開始する。
何かを探しているスキアは相変わらずだが、ずっと観察していて分かった事がひとつあった。
(かなり狭い範囲ばかり探しているという事は、そこに目的の何かが在るのか? だとしても、見つからないとは思えないが…………)
ヒヅキが感知魔法で調べた限り、スキアが居るのは平原。それも起伏がほとんど無い、見晴らしのいい平原。そんな場所で隠れるなど不可能だろう。
(………………)
そう思いながら考えを巡らしていくと、ふと閃く何かが脳裏をかすめる。
(スキアが同じ場所を行ったり来たりしているという事は、まず間違いなくあそこには何かが在る。それが仮に人間だとしたら、スキアに見つかりながらも見つからない方法で隠れているという事になる。そしてその方法だが…………ふむ。もしかして、地下に潜んでいるのか?)
スキアは地形を無視して移動してくる。しかし地面の下であれば、道が繋がっていない限りスキアは襲撃してこない。流石のスキアでも、地面を無視することは出来ないらしい。
であればこそ、スキアが同じ場所を探し回っているというのに、未だに生きていられるという事だろう。
問題があるとすれば、地下に隠れている場合、そこから移動できない事か。下手に移動してしまうと、スキアが付いてきてしまうのだから。




