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残響40

 見つけた無事な魔法道具は、火を出すだけの単純な構造であった。軽く調べた限り、罠などはない。それどころか、火を熾すという魔法以外には何も組み込まれていないので、魔力回路は今まで調べてきたどの魔法道具よりも単純な造りになっていた。

 魔法道具には幾つか種類が在るが、一般的な魔法道具は、魔力回路で陣と呼ばれる魔法を表す記号を作り、それに魔力を通す事で完成させて起動させるという構造になっている。

 そういった魔法道具の罠で1番多いのは、陣を起動させると起動させた者へと襲い掛かる魔法が発動するという罠だ。その次がなんの意味もない陣を描く魔力回路。いや、陣ですらなく、ただ曲がりくねっているだけの魔力回路。

 そういったモノを織り交ぜながら複雑にしていく事で、魔法道具というモノは完成していく。

 なので調べる際には慎重に調べ、それが罠かどうかを探らねばならない。その為にも陣の知識か、陣を読み解く力が必要になってくる。

 あとは勘とかもあるが、ともかく、慎重に調べながら、罠を起動する前にそれを解除しなければならない。魔力回路に魔力を通して、陣全てに魔力を通してしまうと魔法が起動してしまうのだから。

 ヒヅキのように魔力回路に魔力を通して調べる者にとっては、それを事前に察知する事は何よりも重要な技能。しかし、これがまた難しい。

 道を歩きながら、その歩いている道が描いている模様を頭に思い浮かべるようなもの。特にこれが大規模で尚且つ複雑な場合は、常人ではまず不可能だろう。

 ヒヅキでもそれは容易な事ではないので、ヒヅキの場合は魔法の気配を探る事で何とか罠を嗅ぎ取れているに過ぎない。これは異様に魔力の気配に敏感なヒヅキならではのやり方だが、とても効果的に機能している。

 そんな魔法道具が普通なのだが、ヒヅキが今調べている魔法道具は、そんなモノ知らないとばかりに素直な造りをしていた。

(まるで見習いが初めて造ったみたいに何も無いな。とりあえず魔法を起動させる事だけを目的に造られたようだ)

 一本道の魔力回路と、たった一つの陣。罠などの横道は一切ないので、魔力回路にただ魔力を通せばそれで全てが確認出来る。長さも複雑でない分、かなり短い。

 結局、その魔法道具を調べ終わるまでに1時間と掛からなかった。

(もう1つ調べてみるか)

 調べ終わった魔法道具を背嚢に仕舞うと、次の魔法道具を取り出す。壊れていない魔法道具は、一応持っていく事にした。火が点くというのは単純だが便利である。

 次に取り出した魔法道具は、一辺が10センチメートルほどの小さな箱。

 その魔法道具はほぼ壊れているので、何の魔法道具かはまだ判っていない。それでも上部が持ち上がる構造になっている様なので、その辺りが関係しているのだろう。

「さてと」

 ひとつ深呼吸をすると、ヒヅキはその魔法道具を調べ始める。

(……複雑、というほどでもないか。こちらも結構単純な造りだな。それでも罠があるようだから、先程よりは魔法道具らしいか)

 別に罠が在るから魔法道具という訳ではないが、魔力回路が複雑という事は、それだけ複数の魔法で構築されているという可能性が高く、その場合はより優れた効果を発揮する魔法道具である可能性が高かった。

(魔法を連携させて発動させるほどではないか。しかし、一応罠があるようだし、先程の魔法道具を造った次の段階といった感じだな)

 先程が魔法を組み込むことを目的にした魔法道具であれば、こちらはそれに罠を足す事を目的とした魔法道具といった感じ。先程の魔法道具の一歩先といったところ。

 この魔法道具と先程の魔法道具はフォルトゥナが見つけたので、その時の事をヒヅキは聞いていないが、もしかしたら同じ場所で見つけたのかもしれない。もしそうであれば、そこは魔法道具職人の育成場所だった可能性もある。

(職人の育成ね。もしそうであれば、もうその段階まで技術が熟成していたと見るべきか? 師弟がそのまま流れてきて居着いたという可能性も在るから何とも言えないが)

 そこまで考えたところで、もう亡んだ国の事だと、ヒヅキは肩を竦める。どうも単純な造りの魔法道具であるからか余裕が生まれ、余計な事を考えてしまっていたようだ。

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