残響39
首都を出た頃には、ヒヅキは魔法道具を更に3つと、刃こぼれの少ない普通の剣を1振り手に入れていた。
剣の方は刃長が70センチメートルにやや届かないぐらいの短い物で、持ち運びはしやすい。ところどころ僅かに刃こぼれしているが、普通に使用する分には数回は保つだろう。
量産品の剣なので別段珍しくはないが、他にまともな剣が無かったのでこうなった。もっともヒヅキにとっては、使えればなんだってよかったのだが。
魔法道具の方は、3つの内2つは前に調べた時を報せるだけの魔法道具同様にほぼ壊れていたが、1つだけまだまともに機能している魔法道具をフォルトゥナが見つけた。
それは火が吹き出る魔法道具で、高さ5センチメートルほどの円筒形のそれを握って魔力を通すと、1センチメートルほどの小さな火が出る。
ただそれだけの魔法道具だが、壊れていなかったので、現状では貴重な品だ。
首都を出ると、平坦な地が広がる。そこに幅の広い道が延びているが、ところどころ壊れているのが見える。ここでもスキアと戦ったのだろう。
それでも歩くだけならば問題ない。馬車を連れているならば慎重に進む必要が在りそうだが、ヒヅキ達は少数の徒歩での移動なので、そもそも道の有無はそこまで重要ではない。
その道を少し進んだところで、ヒヅキは丁度いい岩を見つけて腰を下ろす。魔法道具を見つけてから調べるのは後回しにしていたので、そろそろ調べようかと思ったのだ。
何かを探しているスキアは、未だに目的のモノを見つけられていないような動きをしているが、違う様な気もする。とはいえ、もしもその何かが生き物であれば、スキアから上手く隠れている事にヒヅキは素直に感心する。
スキアがどうやって対象を捉えているのかは不明だが、スキアは生き物を捉えるのがかなり上手い。隠れるには気配を完全に絶たなければならないだろう。それはヒヅキでも簡単にはいかない。
であれば、現在スキアから隠れているのが生き物であるならば、ヒヅキ以上に気配を遮断する能力があるという事になる。もしくは、スキアの感覚をかく乱させる能力が高いか。
どちらにせよ、そうだったならば、ヒヅキ達でも見つけるのは難しいだろう。スキアと同じように対象を捉えているのであれば、だが。
そんなことを考えつつ、壊れていない魔法道具を取り出す。最初に調べるのはまずはその魔法道具。
(中途半端に壊れていない分、調べやすくはあるからな)
ほぼ壊れている魔法道具だと、何かの拍子で暴発するかもしれないという心配があった。中途半端とはいえ機能している以上、まだ暴発の危険性は存在する。
これが完全に壊れていると暴発はしないのだが、その代り調べてもあまり分からない。それに壊れているとは魔力回路が完全に潰れている事を指すので、そもそもヒヅキのような調べ方では調べようがないのだが
(壊れている魔法道具は、魔力回路が潰れているから余計に複雑になっていたり、そもそも連動しているはずの魔法同士のどれかが潰れていたりで、予測もし難いというのは辛いところ)
取り出した魔法道具を観察しながら、壊れた魔法道具について思い出す。あれは機能しているのが不思議な魔法道具だった。
(連動して起動しているはずの魔法が単独で動いていたり、潰れているはずの魔力回路が何故か機能していたり、あの壊れ方はよく分からなかったな)
その辺りを丹念に調べたりしていたので余計に時間が掛かったが、それでも結局は解明しきれずに終わる。
それに、何故か全てをある程度調べ終わると、あの魔法道具は動かなくなってしまった。
(完全に壊れた訳ではなかったが、それでも機能が止まってしまった。魔力は流れていたと思うのだが、どの魔法も反応しなくなったんだよな)
不思議だと思いながらも、ヒヅキはその事を頭の片隅に追いやり、手元の魔法道具を調べ始める。




