残響37
コズスィの首都内を探索するのに数日を掛けたヒヅキだが、成果は武具を数点ぐらい。
その武具も全てが量産品で、武器には刃に欠けが、防具には穴が開いている。どれもこれも使うには鍛え直さなければならないだろうが、近くにちょうどよい鍛冶場も無ければ、鍛冶師だって見当たらない。
使いようがないと思い、それでもヒヅキは一応それらを1ヵ所に集めて置いておいた。
フォルトゥナの方は、魔法道具をひとつ見つけていた。かなり弱くなったとはいえ、エルフの眼はこういった広大な場所から魔法道具を探す事に関しては役立つらしい。ただ細かく判る訳ではないので、そこら辺に何かある気がする、程度しか判らないようだが。
それでもヒヅキと違い、フォルトゥナは魔法道具をひとつ見つけたのだから、持たざる者よりは優秀なのだろう。
そのフォルトゥナが見つけた魔法道具だが、一定時間ごとに時刻を報せるだけの魔法道具で、それ以外には何の役にも立たない。それにそれも壊れかけていて、動いてはいるが、肝心の時を報せる機能は失っていた。
しかし、ヒヅキにとってはそれでも十分で、所有者が居ないので調べるには好都合の代物。
フォルトゥナにその魔法道具を貰ったヒヅキは、今は休憩がてらそれを調べている最中であった。
ほとんど壊れているとはいえ、それでも魔法道具である。一応魔力回路は健在なので、それを調べるだけでも価値はある。ヒヅキはそれを調べることが出来る分、その価値は一般の者よりも大きい。
「………………」
魔力回路というものは、謎が多い。特に人間にとってはそれは特に謎であった。しかしそれが何故かは、今のヒヅキは知っている。
(確かにこれは魔力が視えないと難しいな。魔力が感覚で理解出来るのであれば別だが、人間では無理だな)
人間は魔力を視る事が出来ない。魔力を感じるのも難しいので、魔法道具を人間が作るなど土台不可能だったのだ。
(ドワーフは魔力を感じる力が強いのかね? 魔力を視る事が出来るという話は聞かなかったが)
フォルトゥナの話を思い出し、さてどうなのかと少し興味を抱く。その辺りの資料は人間界にはなかった。エルフが魔力を視る事が出来るというのも、最近知ったばかり。
とはいえ、今はドワーフが居ないので調べようがない。フォルトゥナに訊けば分かるかもしれないが、知ったところで意味がない。
そんな事よりも、今は魔法道具に集中するべきだろう。魔力回路はかなり複雑なので、いくらヒヅキといえども、他の事を考えながらでは調べるのも難しい。壊れかけている魔法道具なので、慎重に調べなければ直ぐに駄目になってしまう。最悪暴走してしまう可能性も捨てきれない。
魔法道具の暴走は、よほど無茶な使い方をしない限りは起こらないが、それでも暴走した例は幾つかある。
その中には、補助用の小さな魔法道具を暴走させてしまい、村が1つ消えたというモノもあった。魔法道具の暴走は、それぐらいに恐ろしい。
たとえ攻撃用の魔法道具ではなかったとしても、それだけの規模の破壊力を出せるのだ、もしも暴走させてしまったら、手にしているヒヅキはただでは済まないだろう。
因みに、魔法道具を意図的に暴走させることはほぼ不可能だといわれている。というのも、そもそも魔法道具の暴走について分かっていない事が多すぎる為だ。
無茶な使い方をすれば暴走する事は分かっているのだが、どれぐらいの無茶をすれば暴走するのかは不明。
同じ魔法道具を同じように扱っても、暴走する魔法道具と、暴走しない魔法道具があったという実験結果も出ているほど。
なので、自爆には使えないし、それによる攻撃にも使えない。もっとも、もしも魔法道具の暴走を意図的に引き起こす事が容易なのだとしたら、街に入る際の検査で厳重に取り締まられていることだろうが。
 




