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ガーデン3

 ガーデナー城を十分堪能したヒヅキは、そのままガーデンの探索に移る。ついでに何か仕事もないかと探しながら。

 ヒヅキは大量に人が居る場所を意識的に避けながらガーデンを見て回る。

 ガーデンには様々な店が在り、また品揃えも豊富であった。

 例えば生活用品を扱う雑貨店には糸やタワシやまな板などの市民向けの商品以外にも、麻袋や鍬や荒縄などの農業関係者や業者向け、寝袋やテントやランタンなどの冒険者向けなど、とにかく幅広く取り扱っていた。

 勿論そんな店ばかりではなく専門店もあり、そちらでは量販店では中々手に入らないような珍しい品も売っていたりした。

「……ここは商業区画なのかな?」

 そこでヒヅキははたと立ち止まり辺りを見渡すと、そう判断した。

 商店が多い多いとは思っていたが、先に進むにつれ商店しか見なくなっていた。

 どうやら居住区画から商業区画に入り込んだらしかった。

 ガーデンの三層目の城壁の内側は居住区画になっているのだが、当然そこには商店が存在する。

 ガーデンが出来て間もない頃は乱雑としていたらしい街並みも、今では幾つかの区画に分けられて整備されている。商業区画はそのひとつだ。

 この商業区画は主に住民を相手にしているが、それとは別に、大通りには主に旅人相手の商店が建ち並んでいる。そちらはこちらと違って露店も出ていた。

「さて、どうしよう」

 別段目的があった訳ではないヒヅキは少しだけ悩むが、とりあえず店を回ってみることに決める。

「んー何だろうな、この肌に突き刺すようなピリピリとした感じは」

 それはマイグーラ草原の半ば辺りからガーデンに近づくにつれてどんどん強くなっていた感覚だった。

「この感じはソヴァルシオンで感じたものに似ているけど、その時より強いな」

 しかしそれの正体が分からず、ヒヅキは独り首を傾げる。

「近い感覚なら知ってるんだけどな……はぁ、まぁいっか」

 ヒヅキは考えるのを中断すると、気づけば下を向いていた頭を持ち上げようとするが。

「ん?」

 それに気づいたのは偶然だった。

 地面に直径1、2センチほどの僅かに光を反射させている円形の物体が落ちていたのだ。

 ヒヅキはなんとなくそれを拾うと、マジマジとそれを観察する。

「これは魔鉱石のブローチ……いや、ペンダントなのか?」

 光を反射させている赤みがかった小さな石が嵌め込まれたそれには、裏側に何かしらを通す取手のようなものが取り付けられていた。

「それにしても魔鉱石ねぇ。何でこんな高価なものが?」

 魔鉱石とは魔力を宿した鉱石のことで、二種類存在している。

 1つ目は天然の魔鉱石で、主に魔力密度の高い場所でたまに発見される。

 ただし、魔力密度の高い場所などそうそう存在し無いうえに、例え運良く魔力密度の高い場所発見出来たとしても、採掘量が少ないために非常に高価であった。

 更にそんな場所には必ずと断言出来るだけの確率の高さで、魔物と呼ばれている魔力を取り込んだ動物がうろついていた。それも通常見掛ける魔物よりも強力で凶暴な魔物が。

 2つ目は人口の魔鉱石で、こちらは普通の鉱石に魔力を注入することで造られるものであった。

 魔力の注入の仕方は複数存在しているが、そのどれをとっても天然物ほどではないにしろ、やはり高価なものになっていた。

 理由は簡単で、その工程を行えるだけの優秀な魔力行使者が少ないためであった。

 そのためどちらの物でも流通量の少なさから値段も驚くほど高価なものになっていた。

 それは手元にあるこの小さな小さな魔鉱石の欠片でも同じことが言えた。

「……………」

 さてどうしたものか、とヒヅキは考える。これを衛兵に届ければいいのか、それとも見なかったことにしてこのまま置いておけばいいのか……。

(確かに魔力を帯びてるから本物の魔鉱石なんだよなぁ)

 魔鉱石は物に組み込むことでそれを強化させることが出来るので、需要というものは結構あった。その供給とのアンバランスさが高価になる元凶なのだが、ヒヅキは別に魔鉱石に興味はなかったし、売ったところでこんな貴重な物なら特定が容易いため、明らかに面倒事になるに決まっていた。

 ヒヅキは悩んだあげく、とりあえず衛兵を捜すことに決めた。見なかったことにしたら行方が気になってしまいそうであったから。

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