残響33
コズスィの民であった場合、もれなくコズスィの信者である。しかし、コズスィの信者全員が狂信者という訳ではない。中にはあまり多くはないが、とりあえず信仰しているだけという者だって存在している。
様々な種族が集うコズスィは新興の国家ではあったが、比較的裕福な国家でもあった為に国民になりたいと願う者は存在していた。そういった理由から改宗した者達は、大半が一応はコズスィの信者だが、都合が悪くなれば直ぐに信仰を棄てる程度の信心しか持ち合わせていない。
スキアが探しているのが生き残りであった場合、そういった者達も存在しているという事。勿論、狂信者もかなり存在していたが。
(まぁ、そんな事は関係ないが)
それでもヒヅキにとっては、コズスィの信者は皆等しく抹殺対象でしかない。なので、その辺りを考慮する必要はなかった。一緒に旅をしている者で、それを咎めるような者は居ないのだし。
更には現在の情勢では、私刑を問われる様な事態には発展しないだろう。それが出来る者も、機関も存在していないのだから。
とりあえず色々と調べる為にも、コズスィの首都であり、唯一の街へと向かう事にする。コズスィの国土自体がそれほど広くは無いので、直ぐに到着するだろう。
フォルトゥナからスキアの場所についてもう少し詳しく聞いてみると、どうやら近場のスキアが居るところが首都のようだ。遠くの何かを探しているというスキアは、コズスィとドワーフの国との国境近くらしい。
スキアの動向をフォルトゥナから聞きながら、休憩無しで道を進んでいくと、直ぐに首都に到着する。
「何も無いな。徹底的に破壊されている」
瓦礫だらけで何も無いそこは、まるで岩石地帯であるかのよう。荒涼としたその風景は、この世の終わりを表現している様にも思えてくる。
ヒヅキは首都内に入っていく。それを遮る壁や門もなければ、門番だって存在しない。
足下に派手に転がる石材や木材だが、国境近くの砦同様に綺麗なモノが散見できる。だが、流石に砦よりも遥かに広いだけに、その割合は多くない。
足下に気をつけながら首都内を進んでいく。建物の基礎部分の残りから推察するに、かつては整然と建物が並んでいたのだろう。
地面は石畳が綺麗に敷き詰められていた跡があり、それは大通りだったと思われる場所以外でも同様のようだ。それだけで、どれだけ発展していたのかが窺える。
(街ひとつだけの国だが、出来て間もない国でここまでか。流石は資産と技術を吸い上げていた国なだけあるな)
首都内を探索しながら、ヒヅキはコズスィについて思い出す。
コズスィは寄進という形で信徒から金や技術、知識や労働力などあらゆるものを吸い上げている宗教であった。そして、住民は皆信徒であるので、それを喜んで受け入れていた。無論、そこまで深く信仰していない者にとっては不満があっただろうが。
(それでもここに住み続けるぐらいには恩恵も大きかったという事なのだろう)
移住するのは大変ではあるが、それでも何もかもを吸い上げるような国に住み続けるぐらいにはコズスィは魅力的な国だったのだろう。しかし、仮にスキアが襲ってこなかったとしても、その繁栄は長くは続かなかっただろうが。何せ、コズスィは街ひとつ程度であれば吹き飛ばせる者を敵に回していたのだから。
街の中を歩きながら何かないかと探してみるも、有用そうな物は見当たらない。
(それにしても、食料がないのは解るが、物が少なすぎるな。住民はコズスィ、というか教主に寄進しているとはいえ、あまりにも質素なような? これがここの普通なのだろうか?)
建物が在った場所を探しても、貴金属などの高価なモノどころか服さえろくに見当たらない状況に、ヒヅキは眉根を寄せる。街は立派でもそれほど質素なのだとしたら、信心の薄い住民が逃げていてもおかしくはないのだが。
そう思いながらも、ヒヅキは他の建物も調べていく。家具などは建物ごと壊されているのでよく分からないが、調べた建物は何処も似たような状況であった。
 




