残響27
魔法道具にも色々とあるが、見る機会というのはそれほど多くはない。
エルフの国やドワーフの国のように、魔法道具を造っているような国であれば話は違ってくるが、人間界ではたまに冒険者が身に付けている装備やカタグラを目にするぐらい。庶民であればそんなものだが、そもそも一般人には魔法道具かそうでないかを見極められないので、あまり関係ないのだが。
例外としては、大きな街では街灯に魔法道具の明かりを使用されている事があるので、その辺りか。
とにかく、普通は縁のないものだし、一般人は魔法が使えないので、最初から関係ないと決め込んでいる為に興味を持つ者は少数。
ヒヅキは一応興味を持っていたが、それでも旅立つ前では使えたら便利だろうな程度で、そこまで強い興味ではなかった。
(魔法道具を幾つか調べれば、もう少し構造が解ると思うのだが)
そんな状況であったので、魔法道具を手にするという機会はかなり少ない。しかし、魔法道具を調べるには手に取らなければならない。少なくともヒヅキはそうだ。
エルフのように魔力が視える者や、ヒヅキのように魔力に敏感な者でなければ、勝手に調べられても気づかないだろう。それでも、念の為に調べることを伝えておいた方がいいので、仮に魔法道具を手にする機会が在ったとしても、勝手には調べられないが。
その点、持ち主不在の魔法道具であればそれも不要。更には魔法を構築できる魔法道具ともなれば、勉強するにも知識の宝庫だっただろう。
ヒヅキは一瞬自身の左腕に目を向けて、魔法道具というモノに興味を持っている自分を改めて自覚する。
この義手になってからというもの、魔法道具が身近になったからか、それとも構造が僅かだが解ってきたからか、他の魔法道具に興味が湧いていた。とはいえ、他に身近に魔法道具なんて物はないのだが。
フォルトゥナは自前の魔法で大抵のことが出来るうえに、保有魔力量がかなり在るので、そもそも魔法道具は必要ない。魔法道具というのは、本来弱者が強者に挑む為の補助か、不便を無くす為の道具なのだから。
(冒険者も持っている者はスキアとの戦闘の前線に居るか、首都などの周辺を警戒していて街中にはあまり居なかったからな)
ガーデンでの状況を思い出し、まだ平和だった頃に興味があればなと思う。もしそうであれば、もっとソヴァルシオン辺りで冒険者を観察していた。
(特にカタグラ。あれは結構珍しい)
冒険者がほぼ必ず所持している映像記録装置であるカタグラ。あれも魔法道具なのだが、用途が記録なので少々他の魔法道具とは性質が異なっていた。
特徴としては、無論映像を記録出来る事が最初にくるが、他にも見た目を変えることが出来る。
基本は球体らしいが、それも所持者によって様々に変えられて、棒状や板状などの形状だけではなく、ある程度の大きさの変化も出来るのだとか。
更には不可視にも出来るらしく、カタグラを見える形で連れているのは大抵が新人という話だった。
そんな一風変わった魔法道具なので、ヒヅキは是非とも調べてみたいと思ったのだが、冒険者にとっては重要で貴重な魔法道具なので、そう簡単には触らせてくれないだろう。
調べたから壊れるという事はないが、ヒヅキの調査方法は魔力を通して調べるというモノなので、万が一という事があるかもしれない。なので、ヒヅキも軽々には頼めなかった。
(調べられるという事自体を嫌う者も居るからな。冒険者は相手にするのは面倒だし)
冒険者というのは横の繋がりが結構強い。なので、不当に冒険者に手を出したら、冒険者全てを敵に回すと考えた方がいい。それは国境や種族をも超えるので、かなり厄介な相手だ。
しかしそれも、平時であればという但し書きが付いてくる。現状では冒険者の横の繋がりというのはほとんど機能していない事だろう。




