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ガーデン2

 ヒヅキは最も賑わっている大通りを避けて横道を通る。

 横道と言っても大量に人が居る王都での横道だけあって、道幅もさることながら人の量も依然として多かった。

 それでも大通りよりは人が少ない分、通行がだいぶ容易に出来るようになった。

 ヒヅキはその横道を人の流れに乗りながらも、人の間を縫うようにして前へと進む。

 そうしてどれだけ進んだだろうか。気がつけばすっかり夜になっていたが、ヒヅキはお目当ての物をある程度視認出来る距離まで近づいていた。

「はぁー。さすがは王様が住んでいるだけあって立派なものだなぁー」

 ヒヅキの視線の先では、視認出来るだけでも沢山有る窓のほとんどから魔法光の灯りが漏れている立派な王城の姿が在った。

 その王城を囲む城壁は、街の灯りでうっすらと照らし出されていた。

「んー、でもやっぱり明るい内に来た方がいいんだろうなぁ」

 別名白亜の城と謳われるガーデナー城は、それを囲む城壁も含めて綺麗な白色をしているらしく、それはガーデンの名物になるほどに美しいらしかったが、やはりそれを存分に堪能するには、夜ではいささか光量が足りていなかった。

「とりあえず道は覚えたから、次は宿屋だな。安いところでいいんだけど……」

 ヒヅキは辺りを見渡すも、ガーデンに詳しくないヒヅキにはどこに何があるのか分からず、宿屋探しは難航しそうであった。



 ガーデンは広い。

 あれから空いている安い宿屋を探して歩き回った結果、宿を取る前に朝になっていた。

 それだけ探索しても、ガーデンの半分さえ回れていない。

 ヒヅキは明るくなってきた空を見上げると、困ったように頭をかいた。

「まぁ、朝は朝か」

 ヒヅキは気持ちを切り替えると、ガーデナー城に向けて歩き出す。とはいえ、ガーデン中央にでかでかと建っているその城は、遠目にでもその美しい白色が確認出来た。

 ヒヅキは移動がてら、道行く人に宿屋の場所について尋ねた。

 やはり木賃宿というものは一定の需要があるようで、最初に問い掛けた人からそういう安めの宿屋が集まっている区画を教えてもらえた。

 その後も確認の意味も兼ねて数人に同じ質問をしてみたが、全員から同じ場所を教えてもらえた。

 どうやら間違いないらしい。そう結論づけた頃には、ガーデナー城がよく見えるぐらいには近づいていた。

「はぁー」

 その城はとても美しかった。

 賞賛の言葉は山とあるが、そんな月並みな感想が一番しっくりくるほどに、城と城壁の新雪を思わせる無垢な白色は美しく、それはある種の神聖ささえ備えているように感じられた。

 ヒヅキはその光景に、一瞬息をするのを忘れた。

 陽の光を浴びて、圧倒的ながらも控えめにその存在を主張するガーデナー城は、それほどまでに美しかったのだ。

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