残響22
それから数日移動したところで休息を挿み、更に数日進む。その途中で天井にふたを見つける。途中途中で過去視を使用してみたが、やはり誰も居なかった。
ふたを開ける前に感知魔法で外の様子を調べたが、誰かが居るという事はないようだ。
それを調べた後、見つけたふたを少し開けて外の様子を覗き見る。今回は砂嵐が吹き荒れているというような事はなかったので、そのまま外に出た。
(結構奥地まで到着したな)
周囲の様子を探りながら、ヒヅキは地下道を経由してではあるが、ミャニュリュリィリエールの奥地まですんなり到着出来たなと、何処となく拍子抜けしたように思う。
そのまま周囲を見回すと、そこは砂に埋もれた何処かの遺跡のような場所。
石で出来た床は砂にほとんど呑まれていて、ところどころが露出しているだけ。その上に建っている石で出来た建造物も、崩れてしまっていて、中まで砂が入ってきている。
風化している様にも見えるが、確かな事は分からない。それでも、ここに誰も居なくなってそれなりに時間が経過している事だけは分かった。
(放棄されたのか、壊されたのか)
建物の中には、破壊されたと思しきモノも在る。盛大にというほどではないが、それでも人為的に壊されたような破壊の跡が確認出来た。
それはスキアの仕業ではないだろう。スキアであればもっと盛大に、広範囲に破壊されている。それこそこの遺跡のような場所全てが破壊されていてもおかしくはないだろう。
であるので、ここは何らかの原因で放棄されたか、もしくは賊か何かが襲撃してきて亡んだのかもしれない。
(破壊は後に来た者の手によるもので、ここ自体は病気や飢餓で亡んだという線も在るか。考えればきりがないな。調べるつもりも無いし)
どうでもいいかとその考えを棄てると、何か使えそうな物でもあればいいがと感知魔法で軽く周囲を探してみる。しかし、ろくなものがなかった。
ヒヅキは感知魔法で周辺を探って感知できる範囲に何もないと判断した後、とりあえずフォルトゥナに現在地について質問してみる。
そうすると、首都と思われる場所より更に東側に出た事が分かった。
ヒヅキは思ったよりも遠くに出たなと思う。もう1つの拠点は更に北側なので、首都より遠い。
どうしたものかと思ったが、そちらを目指してみる事にする。
ただ、地下道は途中まで一本道だったので、可能性としては最初に在った分かれ道だろう。しかし、流石にそこまでは遠い。それでいて確実ではないので、地上から直接向かう事にした。
砂の上の移動は色々と面倒ではあるが、気温はフォルトゥナが魔法で調節できるので、あとは足下の悪さぐらいだろう。
とはいえ、ミャニュリュリィリエールには道が無いという訳ではないので、そこを通るようにすればいいだけ。
感知魔法で道を見つけていたので、そこを通って北西方向を目指す。
地上に出たので、感知魔法から過去視に切り替えてみると、幾つか幻影が確認出来た。それは集団で移動しているようだが、道を進んでいるだけのようだ。
なんの集団かは分からないが、馬のような生き物の幻影も確認出来る。しかし、上に誰か乗っている訳ではない。よくよく視てみれば、一人空中に座っている者が居た。
(荷馬車か何かと、その護衛といったところか? であれば、これは商人だったのかもしれないな)
何処を目指していたのかはまだ分からないが、それでも現在進んでいる道は首都にも続いているので、そちらかもしれない。もしそうであれば、首都がスキアに襲われたのは比較的最近なのだろう。
それだけ確認すると、ヒヅキは過去視から感知魔法に戻す。そうして周囲を探りながら幾日も掛けて道を進むと、首都方面ともう1つの拠点方面への分かれ道に差し掛かる。
そこで過去視を使用してみると、過去視に映っていた商人の一団と思しき幻影は、首都方向ではなくもう1つの拠点方向へと進んでいた。
 




