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残響20

 地下道から出て数時間後に目標の砦に到着する。空の色は薄くなってきており、そろそろ夜明けが近い事を教えてくれる。

 そんな時間だが、寝ることのないスキアを相手にしている砦は、既に騒々しかった。

 砦の上には幾人もの影があり、攻め立てているスキアを魔法や魔法の付与された矢で攻撃している。

 スキアは砦の防壁を攻撃していて、防壁上の相手にはほとんど見向きもしていない。しかし、その攻撃の余波や逸れた攻撃で少なからぬ被害も出ている。

 それでも防壁が1ヵ所でも破られてしまうと、そこからスキアがなだれ込んできてしまうので、どうしてもスキアの攻撃地点からあまり離れる訳にはいかない。距離が離れると、それだけ攻撃の威力が下がってしまう。スキア相手では、攻撃の威力が少し下がっただけでも致命的なのだから。

(ふむ。……あの防壁、普通の防壁ではない気がするな)

 少しの間その様子を観察したヒヅキは、妙に硬い防壁に疑問を抱く。スキアの攻撃を受けても、防壁が少し欠けるか小さなひびが入るぐらい。

(防壁に魔法的な護りを付与させるのはおかしな事ではないが、あそこまで強固だと魔法を付与して間もないか、中に常に魔法の護りを付与できる魔法使いが居るかといったところか。そして、あの矢を見れば、後者なのだろう事は容易に想像がつく。あとは人数だが……)

 ヒヅキは感知魔法に意識を集中させて、砦内の魔法使いを探していく。ヒヅキはエルフなどの一部の種族のように魔力を視ることは出来ないが、それでも魔力の強弱ぐらいは感じることが出来る。

 そうして、それに集中して砦内を感知魔法で探した結果。

(矢への付与はともかく、防壁に防護の魔法を付与出来そうなぐらいに強そうな魔法使いは十二か。全員が冒険者のようだが、それにしても多いな。いや、スキアの攻撃に晒されながら魔法を維持し続けるには少ないとも言えるのだが、こんな小さな砦ではありえない多さだ。つまりはそれだけの力がある組織という訳だから……やはりこの砦ぐらいは潰しておくか)

 改めて気軽にそう決めると、ヒヅキは観察を終えて魔砲を放つのによさそうな場所を探す。

(砦の中に光球を入れやすい場所がいいが)

 感知魔法と併せて使用すれば山なりでも問題ないが、山なりは少々調整が難しいので、可能であれば上から投げ下ろすかたちが望ましかった。

 しかし、周囲には岩は在るも丘のような場所はなく、岩もどれも砦より低い。

(まぁ、当然か)

 その結果に当然だなと思いながら、ヒヅキは諦めて感知魔法を使用して、魔砲の弾である光球を落とす場所を決めていく。

 少しして落とす場所を決めると、待機していた魔砲を起動させ、狙いを定めて光球を射出した。

 射出された光球はもの凄い速さで上空へと撃ちだされると、そのまま急な山を描きながら落ちていく。そして。

『フォルトゥナ。目を瞑って、砦から顔を逸らせておいた方がいいよ』

『はい』

 狙った場所へと光球が着弾した瞬間、光球が内包していた力を解き放つ。

 太陽が落ちたのかと思うぐらいに目を焼くような光が周囲を呑み込み、それが収まった頃にヒヅキは目を開く。

 砦に近い位置に居たので、目を閉じて顔を背けていても、まだ眩しい。その結果に、更に腕か何かで目を覆っておいた方がよかったかなと思っている間に世界に色が戻り始めたので、ヒヅキは攻撃の結果を確認した。

 ヒヅキが見たのは、夜が明けてきたばかりの薄暗い世界に出来た大きな穴。

 穴の深さは1階分ぐらいだが、小さいとはいえ砦を丸ごと呑み込むほどなので、穴自体は結構広い。スキアも一緒に吹き飛んでいるので、穴がある以外には何も残ってはいなかった。

 生存者どころの話ではない戦果に、ヒヅキは満足げに頷く。計算通りの威力なので、スキアと砦だけを上手く消せていた。

 砦内に居た者達や様々な物も一緒に消えているので、目的の物もしっかりと消し飛んでいる。

 魔砲を放ったことで少々疲れたが、それでも規模の小さな砦で地下も1階分しか無かったので、ガーデンをスキアから護った時に比べればかなり楽出来た方だろう。

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