残響17
『それにしても、3ヵ所にしてはスキアの数が多いが、そんなに大きな場所を攻めているの?』
ホーンとキャトルを参考にすれば数が多すぎるが、ガーデンの時を思えば100でも少ないかなぐらいなので、そう問う。もっとも、エルフの国の時は首都だけでそれ以上のスキアに攻められていたようだが。
『1ヵ所はそうですね。規模から考えましたら、おそらくは首都なのでしょう。ですが、他の2ヵ所は規模としては然程大きくは在りません。しかし、善戦しているのはむしろこちらのようですね。首都の可能性が在る場所は陥落寸前です』
『なるほど。という事は、そちらの方に戦力が集中しているという事なのか、単に力在る何者かが護っているのか』
『魔法装備で身を固めた獣人の冒険者達が護っているようです。装備面では首都を護る者達よりもいい装備をしています』
『ほぅ。それはもしかしたら国とは別の組織なのかもしれないね』
現在追っている幻影が属している組織の拠点なのではないだろうかと考えたヒヅキは、そう言葉にする。もしそうなら、結構力を持った組織という事なのだろう。
(厄介ではあるが、それでもまだ敵ではないか)
いくら強くとも、未だにスキアを殲滅できていない以上、やはり敵というほどの脅威ではない。100程度のスキアであれば、ヒヅキでも単身で滅せる程度の脅威でしかないのだから。
(ま、かなり疲れるからやりたくはないが)
それでも全て倒したら動けなくなるというほどではないにしろ、疲労はかなりのものになる。フォルトゥナぐらいになれば、100など軽いものだろうが。
とにかくそういう訳で、分散したスキアですら倒しきれない程度では、脅威とは呼べない。無論、わざと全部倒していないという可能性もあるし、倒しても直ぐに増援がきているという可能性も在るが、その辺りまで考えていたらきりがないだろう。
『おそらくヒヅキ様の読み通りかと。護っているのは獣人が主ですが、他にも幾つかの種族が確認出来ますので』
『ふむ。なるほど』
ではそうなのだろう。そう思いながら、幻影の続く先を見る。
『それで、その善戦している拠点の場所は?』
ヒヅキはフォルトゥナから拠点のある場所を聞いた後、幻影の進む方角とは少し違うかと思うも、途中で道を変えているかもしれない。とりあえず、拠点と思われる2ヵ所を落とすぐらいの心持でいた方がいいだろう。
幻影を追いながらそう考えるも、常に周囲を警戒しているのはいつもの事なので、そこまで特別な事ではなかった。
ミャニュリュリィリエールに入って数日歩くと、急に周囲の景色が変わる。
(今までも争った跡が至るところにあったが、ここはまた別の意味でも凄いな)
ヒヅキの視線の先にはボコボコの地面が広がっているも、そこは半ば砂漠と化していた。少し手前までは草も生えていたのだが、今居る辺りから先は砂しかない。
(確かにこれであれば、食料不足にもなるだろう)
それがどこまで続いているのかは分からないが、その現状が広範囲に続いているのであれば、食糧難に喘ぐだろう。
実際そうであるからこそ、現状を脱する為に他国に手を伸ばしている訳だし。そしてそれが上手くいかずに更なる悪循環を生んでもいるのだが。
その悪循環も、国の終焉と共に終わりを迎えようとしている。なので別に考える必要はないし、そもそもヒヅキには関係ない話だ。そんな感想を抱いただけで直ぐに頭を切り替える。
(こうも遮る物が少ないと、人目につかないように移動するというのは難しそうだな)
そう思っていると、幻影が少し先の岩影から出てきたきり、その先が確認出来ない事に気がつく。
それに最初、そこから先は時間外なのかとも思ったが、もしかしたらあの場所から地下道にでも続いているのかもしれない。
 




