ガーデン
ガーデンはカーディニア国王が住まうガーデナ城を中心に発展している都市である。国の要たる王が座すだけに当然と言えば当然ではあるのだが、ガーデンにも検問があった。
ガーデンの検問所は幾つも用意されているのだが、そこはさすが首都というべきか、ガーデンを訪れる者の数があまりに多いためにどこも長蛇の列であった。
ヒヅキがその検問所に出来ている長蛇の列のひとつに並んだのが昼頃であった。
それからすっかり陽が沈み、夜空に浮かぶ月が頂点まで昇り、そして沈む。その後沈んだ月の代わりに太陽が中天高くまで昇り、そして過ぎた頃になって、やっとヒヅキの番が回ってきた。
つまりは約1日掛かったということ。夜になると門が閉まり、その際検問所も一緒に閉まることを差し引いても、やはり待ち時間が長かった。それに、兵が見回っているとはいえ、命の危険が伴う野営は一般人には不安をかき立てるようであった。
そして、やっと検問を受けたヒヅキは、その長い待ち時間の理由をその身で体感することになる。
まずは服を脱いで下着姿にさせられてから、探知魔法を併用した身体検査が行われ、危険物等を所持していなかったので、そのまま幾つもの細々とした質問を言葉や順序を変えて何度とされ、同時に持ち物の検査も背嚢をひっくり返して念入りに行われた。
それら全てが終わり、ガーデンに入れるようになった頃には、そろそろ夜になろうかという時間であった。
因みにだが、検問をしている兵の中には相当数の女性の兵も在籍しており、女性の検査をする際には主に彼女らだけで担当していた。要望でもあったのだろうか。
ヒヅキが検問を通過して最初のガーデンの門を抜けると、そこは兵たちの居住区になっていたが、そこに入ろうとする者へと監視が目を光らせているために、そのなかを許可無く見学するということは出来そうにはなかった。
ヒヅキはそのまま進み次の門を抜ける。そこは広大な農工区画となっていて、たとえ籠城戦になっても城内の者が最低限生きていけるぐらいには自給自足がなされているようで、兵の装備もこの区画で製造・整備が行われていた。
ヒヅキがそのまま次の門を抜けると、そこでやっと居住区にたどり着くことが出来た。
一般的にガーデンはこの三重の城壁からなる都市だと言われているが、実は厳密には四重目の城壁が存在した。それは王城ガーデナを囲む城壁である。
しかしこちらは民ではなく主に王族を護るための城壁であるうえに、普段から城門は空きっぱなしで門番が守るだけのために、それが城壁だという意識が民にも薄く、結果として四重ではなく三重の城壁と言われているのであった。
居住区は沢山の人で溢れていた。
門から入ってそのまま真っ直ぐ王城まで続いているという目抜通りは広く、そして記憶が正しければとてつもなく長かった。それでいて何処の店もとても活気に満ちていた。
ヒヅキは周囲を見渡すも、あまりに人が多すぎて先がほとんど見えず、進むのさえ苦労するだろうなと、ため息をこぼしたのだった。