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残響12

(冒険者は護衛だろう。であれば、訓練していない三人が護衛対象か。そしてもう一人というのは……エインさんでいうところのプリスさんといったところか?)

 仮にそうだとして、こんな状況でも護衛がつくような相手となると、それ相応の地位に就いていた人物だろう。それでいて人望が在るのか、もしくは余程恐れられているかといったところ。

(人格者であれば質問もしやすいかもしれないが、ただの愚者であれば面倒だな)

 その場合は離れればいいのだが、冒険者が居る以上、その時は何事もなく離れられない可能性が僅かに在った。もっとも、その場合に被害を受けるのはヒヅキ達ではなく相手側だが。

 幻影の進む方向を確認した後、足の向きを北側に動かす。そうしながら、ヒヅキは何かあった時の為にフォルトゥナに他の人間の集団についても訊いておく事にした。

『フォルトゥナ。さっき訊いた集団以外の人間の集団で、次に近い集団はどれぐらい離れている?』

『次に近い集団ですと、先程の集団から更に4日ほど西に進んだ場所に。数は4。全員冒険者だと予想されます』

『なるほど。流石にそこまでいくと遠いか』

 3日離れているという最初の集団だけでも十分遠いというのに、更に4日も離れているとなると、流石に躊躇われた。

 今回も急ぎではないが、それでものんびりする気もない。しかしそれでも、よく分からない権力者よりは冒険者の方が話が通じそうな気もしている。

(……いや、そうでもないか。冒険者にもろくでもないヤツは居るからな)

 冒険者は身体能力が高いだけで、それを除けば他と大差ない。一応冒険者全体の傾向として政治に関わるのを厭う傾向は在るが、一般市民がそもそも政治自体に興味が無い。そんな事より今を生きるだけで大変なのだ。

 それ以前の話として、冒険者が政治に関わったとしても、大抵は戦力として利用されるだけ。それを嫌ったというのも理解出来る話だ。

(戦争の道具として、または脅しの道具として。そして、相手がそういった力を持ち出せば、それに対処しなければならない方も同じ力を持ち出す。その先に待っているのは、冒険者達にとってはろくな未来ではない。そういった意図もあるらしいが、今や単に政争に巻き込まれるのが面倒という部分が強い印象だったな。そんな集団だ、割と荒くれ者の集団に近い。まともなのも居るが、場所によっては無法者に近いとも聞くからな……)

 キャトルの冒険者事情についてはよく知らないヒヅキは、このまま冒険者の集団と会うよりは、権力者か何かを護っている集団の方が話が出来るかもしれないなと判断する。

 それに、やはり遠いというのは色々と躊躇する要素でもあった。

『フォルトゥナ。最も近い集団の許まで移動するから、進路がずれたら教えてくれ』

『お任せ下さい!』

『頼んだ。この国の現状について少し情報を得たいからね』

 追っていた幻影から離れたとはいえ、念のために過去視は起動させておく。

 しばらくして道らしき場所が近くなると、その瞳に映る幻影の数も増していった。

 過去視で捉えた幻影は、算を乱したように移動しているので、何かから逃げている最中だったのかもしれない。先を追って視線を動かせば、途中で動かなくなった幻影も居る。

(この辺りにもスキアがやってきたといったところか? それにしては動かなくなった数が少ないし、あまりにも綺麗だ)

 時間軸が違うという可能性も在るも、それにしても倒れるように動かなくなった幻影の数は10にも満たない。それにもしもスキアに襲われたのだとしたら、倒れるように息絶えるなどありえないだろう。

(ふむ……これは俺が勘違いをしているのかもしれないな)

 未だに幻影を綺麗に捉える事が出来ていないので、進行方向さえ予想でしかない。であれば、予想した進行方向が逆なのかもしれないし、そもそもが逃げているという訳ではないのかもしれなかった。

 それから道に出たところで、ヒヅキは何となく状況を理解する。

(………………もしかしたらこれは、スキアではなく賊にでも襲われたという事だろうか? であれば、逃げていると思った道の外に伸びている幻影の幾つかは、逆に道の外から襲撃してきた賊の幻影という事だろう)

 そうであれば、逃げている様子も、綺麗な死に様も納得がいく。どんな時でも他人から奪う事しか考えていない者達は居るものだ。

(しかし、それらももうこの辺りには居ないという事は、逃げたというよりもスキアに狩られたと判断した方がいいだろうな)

 もしかしたらこの近くに賊が拠点としていた場所が在ったのかもしれないなと思ったヒヅキだが、特に必要なモノも無かったので。探すのは止めておいた。

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