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残響11

 密入国しているのを証明しているかのような道なき道を進み、キャトルに入国する。

 その道すがら、遠くにキャトル国境付近の砦を目にしたヒヅキだが、その砦はホーンの時同様、無残に破壊されていた。

(ここも亡んだのか?)

 現在の状況が不明な為に、ヒヅキはフォルトゥナに問い掛けてみる。

『フォルトゥナ。キャトルの今の状況が分かる?』

『スキアの反応が幾つかあるだけです。人間の反応も在るには在りますが、少数の集団が幾つかといったところです』

『ふむ。という事は、キャトルは既に亡んでいたか』

『そうなるかと』

『そうか。ありがとう』

 フォルトゥナとの会話を終えた後、ヒヅキは幻影を追いながら、目の前の幻影について考える。

(キャトルがいつ亡んだのかは不明だが、この幻影はどう考えても密入国している。であれば、単なる情報不足なのか、まだこの時にはキャトルは存続していたのか、もしくは単にこの道を通った方がキャトルを抜けるのが早いからか)

 どれも可能性としては在るが、それでもそれをもう少し詳しく調べてみれば、この幻影の時間軸が判明するかもしれない。そうなればこの幻影の色がどの時間軸かの目安となるだろう。

(しかし、その為には情報が必要だが、その情報を持っていそうな相手がいない訳だが……)

 そこで一応少しは人間が生き残っているというフォルトゥナの報告を思い出す。

(人間ね……未だにスキアが居る中で生き残っている人間というのは、はてさてどんな者達か)

 可能性が高いのは冒険者だろうが、全てがそうとも限らないだろう。中には冒険者に護られた権力者が居てもおかしくない。それか冒険者の身内とか。

(なんでもいいか。それよりも情報だな。キャトルが亡んだ時期が判りさえすれば、俺としては十分なのだが)

 キャトル自体には興味のないヒヅキにとっては、それ以外に欲しい情報はない。別にキャトルに知り合いが居たとかも無いのだから。

(しかしそうなると、獣人の国も滅んだのか? キャトルが亡んでなお獣人が攻めてきていないとなれば、滅んだのか、もう攻め込む余力もないのか)

 現在追っている幻影が属しているかもしれない国について考え、いっそ全てをスキアが滅ぼしてくれていればいいのだがと考えたが、それはまだ早いかもしれない。

(……このまま行けば、獣人の国まで行くだろう。ならばいっそ、その先まで進んでもいいかもしれないな。旅をしたいというのは、最初の想いだったような気もするし)

 ろくに覚えていないのだが、そんな事をふと思い、なんだか妙な気持ちになったヒヅキは、浮かんだ曖昧な感情を口の端に浮かべる。

(滅びゆく世界だ、煩わしい国境ももうないようなモノだろう。ならば、それもいいのかもしれないな……ま、今考える事でもないし、後ろの邪魔者達の事も考えなければならないのだが)

 結局それが足を引っ張るなと思うも、もう悩むのも飽きてきていた。

 ウィンディーネやフォルトゥナに女性と、受け入れるには抵抗があるが、それでもそういうモノだと理解ぐらいはしようと決心する。

 解り合えない存在が居るなど、何もヒヅキだけ特別な話という訳ではない。であれば、理解出来ない事を理解しておくぐらいはするべきなのだろう。

(理解しようとするだけ無駄な存在。であれば、理解しようとしなければいい。もっと早くから気づいていれば、ここまで疲れなかったかもしれないのにな)

 自分の愚かしさに小さく息を吐くと、ヒヅキはフォルトゥナに再度声を掛けた。

『フォルトゥナ。補足している人間の集団で一番近いのはどれぐらい距離がある?』

『今の速度で3日分ほどかと』

『方角は?』

『現在地からほぼ真北です』

『相手は移動している?』

『はい。ゆっくりと北西方向に移動中です』

『数は?』

『八人……いえ、十人ですね。二人ほど離れたところで周辺を警戒しているようです』

『ふむ。という事は、それは冒険者達かな?』

『おそらくは半数以上はそうかと。しかし、三人程は何も訓練していない者で、更に一人は訓練は受けているのでしょうが、冒険者ではないかもしれません』

『なるほど。身なりまで判る?』

『距離がある為にはっきりとした姿ではありませんが』

『構わないよ』

『では、動ける者は軽装か重装のどちらか。これは軽装の者が多いですね。鍛えていない者は、少し動き難そうな服です』

『そうか、ありがとう』

『いえ。私はヒヅキ様のモノです。いつでもご自由にお使いください』

 最早気にする事なく会話を終えたヒヅキは、今の話を頭の中で吟味していく。

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