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残響9

 入る時同様に、出る時もあっさりとしたもの。いや、出る時は元々そんなものであったか。

 それでもより簡易的になった気がしたヒヅキだったが、ガーデンを問題なく出る事が出来るのであれば、そんな事はどうだっていい事であった。

 エイン達には特に挨拶はせずにガーデンを出たヒヅキ。シロッカスに挨拶できなかったのは少し心残りであったが、時期が合わなかったのだ、こればかりはどうしようもない。

 それに昨日エイン達を預けるついでとはいえ、訪ねてアイリスと挨拶はしているのだ。全く顔を出さなかったというならまだしも、それぐらいで気分を害するような人物ではないだろう。いや、顔を出さずとも怒りはしないだろうが。その場合は、心証が大分悪くなった事だろう。

 今回の場合は事前に顔を出していた分、多少心証が悪くなった程度であろう。それよりも会えなくて残念だ、という気持ちの方が強いかもしれないが。とはいえ、実際のところは分からない。

(まぁ、ガーデンへはもう、そうそう来ないだろうからな)

 それこそ、これが最後の訪問という可能性も大いにあった。これから先、ヒヅキが幻影の後を追うにしろ、家に戻るにしろ、ガーデンに用などないのだから。ついでに言えば、次に訪れた時にガーデンが存続している保証もない。

 ヒヅキは1度女性が眠っていた遺跡を目指して移動する。そしてガーデンから十分に離れたところで、1度だけ振り返ってガーデンを視界に収めた。

 しかし直ぐに前を向いて歩き出す。その後をフォルトゥナと女性が続くが、ウィンディーネは相変わらず姿を消したまま。

 それがヒヅキにはやや意外ではあったが、姿を現さないのであればその方が都合がいいので、気にしないことにした。

 現在は日が大分傾いてきて直に夕方になろうかという時間。本来であれば出発を明日に見合わせるか、そろそろ安全に野営が行えそうな場所の確保をしていなければならない時間帯。

 少し前まではそのどちらかを選んでいただろうが、現在は足手まといが居ないので、そもそも休憩が必要ない。移動速度だって比べるべくもなく速く、エイン達と共に行動していた時の倍以上の速度で移動していた。

 それでもまだ加減しているのだが、それというのも、ヒヅキが過去視で周囲を眺めながら移動している為だ。もしかしたら遺跡に行くまでもなく目的の幻影を見つけられるかもしれないという期待があっての行動だが、実際はそこまで大きな期待は抱いていない。あくまでも念の為である。

(しかし、やはりまだガーデンからそこまで大きく離れている訳ではないから、幻影の数も結構あるな。そこから(くだん)の幻影やその関係者と考えられる者達を見つけるのは流石に難しいか)

 おかしな動きをしているのであれば見つけられるかもしれないが、それでも輪郭がはっきりとしない幻影では、よほど判りやすく不審な行動を取っていなければ、発見は難しいだろう。そのうえで情報が乏しいので、関係者ともなれば不可能と断言できそうなほど。

 しかしそれは承知のうえなので、大した問題ではない。正直に言えば、過去視の制御のついでといった方が正確なのだから。

 そう思っていたのだが、夜も更けた辺りで、ヒヅキは気になる幻影の集団を見つけてしまった。

 それはヒヅキ達の正面からや全く別の方向、かと思えばヒヅキ達と同じ方向から集った一団で、どうやら合流した後に何やら会話でもしていたのか、一旦固まった後にヒヅキ達の進行方向と同じ方向へと進んでいく。

 固まって移動する幻影を目で追うと、どうやら集団から少し離れて周囲を探っている幾つかの幻影も確認出来た。

 その動きを確認したヒヅキは、いつぞや視た事がある幻影の動きに似ているなと、思った以上に簡単に見つかった幻影に拍子抜けしたように思うのだった。

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