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残響8

 フォルトゥナに後を任せてヒヅキは先に眠る。フォルトゥナに任せることに不安は在るが、そんな事を言っていてはいつまで経っても眠ることは出来ないだろう。

 覚悟を決めて眠りについたヒヅキは、緩やかに意識を手放していく。

「………………」

 そして目を覚ますと、朝であった。

「……話は出来なかったか」

 あの声の主に会えなかったことは残念ではあったが、その可能性は最初から念頭に在ったので、然程残念という感じではなく、気を取り直す。

「さて、起きるか」

 そう思って起き上がろうとして、違和感を覚えて視線を下げる。そうすると、ヒヅキの胸元を枕に眠っているフォルトゥナの姿。

 シロッカス邸で過ごしていた時はいつもの事だったのでそれは別に構わない。しかし、眠っている間の警戒を任せていたはずなのだがとヒヅキは疑問に思ったが、眠っていても警戒ぐらいは出来るかと思い直す。

 ヒヅキが軽く身体を揺すると、直ぐにフォルトゥナが目を覚ました。

『おはよう。フォルトゥナ』

『ヒヅキ様おはようございます!』

 ヒヅキが朝の挨拶をすると、寝起きとは思えない元気な声が返ってくる。やはり本格的には眠っていなかったのだろう。

『昨夜は何も無った?』

『はい! おかしな行動をする輩は確認出来ませんでした!』

『そうか。なら起きるか』

『はい』

 フォルトゥナがどいた後に、ヒヅキも身体を起こす。

 身体を起こした後に伸びをすると、居間に移動する。窓から入ってくる弱い光が室内を淡く照らしていた。

 窓際に寄って空を見上げれば少し雲が出ていたが、雨が降るというほどではなさそうだ。

『今日はガーデンを回って必要なモノを揃えた後に、ガーデンを発つつもりだから』

『畏まりました』

 エインさん達に挨拶は不要だろうと考えたヒヅキは、旅で消耗した物の補充や不用品の処分をした後にそのままガーデンを発つ事にする。ただ、目的地はないが。

(……なんだったら、剣を狙っている集団でも少し調べてみるか? もしかしたら剣を狙われるかもしれない訳だし、今の内に相手の情報を収集していた方がいいような気もするな)

 女性の話では、謎の幻影達は現在ヒヅキが所持している剣を狙っていたという話だったが、仮にそれが事実だったとしても、現在もその集団が存続しているとは限らないだろう。

 存続していたとしても、引き続き剣を狙っているかも分からない。なにより、ヒヅキが所持しているという事を把握しているとは限らないし、今後も把握できないかもしれない。

(とはいえ、事は自分に関わる。不要な剣とはいえ、今は俺が所持している訳だし、この剣はそこらに捨てる訳にもいかない。そんな訳で、楽観視は禁物だろう。ついでにガーデンで剣を保護する革や覆う布を探さないとな。最悪布だけでも確保しないと)

 現状は、鞘に収めた剣を一応布で巻いているといっても、やはりどうしても応急処置なので不安が残る。せめて幅の広い布で覆いたいところ。それに鞘の部分は布だけではなく革で保護して、万が一にも備えておいた方がいいだろう。

 そんなことを考えながら窓際から離れた後に魔力水を飲むと、片付けを済ませて部屋を出る準備をしていく。

 準備を終えると、まだ薄暗い中、宿屋を後にする。

 宿屋を出た後は商業区画へと赴き、必要なモノが在るかどうか探していく。

(品揃えが悪いな。食料品もそこまで多くはない。まだ市場は開けるぐらいのようだが、それもそう長くは続かなそうだ)

 店先を覗きながら、ヒヅキは現在のガーデンの様子にため息を吐きたくなった。それでも外との交流があまりない現状では頑張っている方だろう。

 そんな中でも、必要そうな物は何とか手に入った。しかし、軒並み以前よりも価格は上がっていた。

(ここで儲けて何に使うのだろうか?)

 ついそんな事を考えながら購入したヒヅキだったが、商売をしている以上、儲けを考えるのはおかしな事ではない。仕入れも在るだろうし。儲けを考えないのであれば、そもそもこんな状況で店など出さないだろう。

 買い物を終えたヒヅキは、商業区画から離れて人気の無い場所で荷物の整理を手早く行う。周辺を警戒しながら剣の保護と隠蔽もさっさと終えると、ガーデンを出るために移動を開始した。

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