人探し106
夕食を食べ終えると、話し合いを行う。
ヒヅキは先程まで考えていた予定を三人に伝え、近く自由時間を少し取ろうという話を終える。
それを聞いたエイン達は、嬉しそうに賛同する。やはり洗濯物が増えていたことが気になっていたのだろう。
フォルトゥナは何も言わないが、不満そうだ。それでもヒヅキの決定には従うらしい。
それで近く自由時間を設ける事が決まる。後は場所や天候次第だが、一応周辺を調べた際に幾つか候補は見繕っていた。
話し合いを終えると、エイン達は寝る準備に取り掛かる。
外は雨が止んでいるのでヒヅキは外に出ようかとも考えたが、雨が止んでそこまで経っていないので、地面が濡れているかと諦めた。
エイン達は毛布に包まってさっさと眠りにつく。ヒヅキ達もそちらは気にせず、それぞれの作業に入る。
今夜ヒヅキが行うのは過去視の制御ではなく、別次元を視る為の模索。
現状では別次元とのつながりは、かなり小さな点でしかない。認識するのも難しいその点だが、それをどうにか拡げる必要がある。少なくとも、向こう側の風景を覗く事が出来る程度には拡げなければならない。
そう思いながら、ヒヅキは魔法を現出させる時のように魔力を外部に出して、それをその小さな点に纏わりつかす。
魔力を纏わすと、その魔力で押し広げるように、内側から外側へと点を強引に押し広げていく。
「………………むぅ」
しかし、それでは上手くはいかなかった。一瞬上手くいけそうな感じはしたのだが、結局は失敗に終わる。
それに悔しげに息を漏らすと、ヒヅキは別の方法を思案していく。
(方向性としては悪くなかったと思うが、それでもこれでは失敗だったか)
しばらく考えたヒヅキは、もう1度魔力を使って、今度は別の方法を試してみる事にした。
次は外側から引っ張るような感じで魔力を動かしていく。ヒヅキには魔力は視えないのだが、自分の魔力であればある程度は把握する事が出来る。
少々乱暴な説明ではあるが、魔力同士であれば押し合いが出来る。それを思い出したヒヅキは、現在それを利用して異次元への穴に干渉しているのだが、これが上手くいった。
次元を隔てる空間に開いた小さな穴を拡張させる事にはまだ上手くいっていないが、それでも魔力はその穴に触れる事が可能という事は実証された。普通に触れようとしても穴には触れられない。
(ん? という事は……)
ヒヅキはこの試みが失敗した場合の次を思いつく。しかしそれとは別に、次元を隔てている空間に開いた穴へと魔力で触れられる事について思考する。
(これはこちら側の次元の穴だから触れられるのか? それともここも含めた全ての次元の穴だから触れられるのか……いや、というよりも、いくら魔力でも普段は空間に触れる事は出来ない。であれば、穴が開いているから触れる事が出来るという事になるのか。ならば、これは穴が魔力やそれに類するモノという事に? もしくは次元の挟間にそんなモノが満ちているとか?)
魔力で穴に触れられるという事に疑問を抱きながらヒヅキは思案するも、別次元というモノは未知のモノ過ぎて答えは出ない。
そんな思考を巡らせながらも行った、魔力で外部から働きかける事で穴を拡張させるという方法だが、失敗に終わる。相変わらず手応えはあったのだが、拡張するまでには至らなかった。
その結果に、ヒヅキは思案する。情報が少ないので、その失敗も貴重な情報だ。
(魔力で触れられるというのは間違いないだろう。あとはどうやって拡張するかだが)
ヒヅキは思案しつつ少し場所を移動すると、低い位置に開いている穴の前に移動する。穴の高さはその時々なのだが、立った際の目線以上にはならない。
今回は座った時の目の高さに穴が開いていたので、そうして穴の前に移動したヒヅキは、次の実験に移行する事にした。




