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人探し103

 用意した木の板と短剣を確認後、ヒヅキは短剣を持って木の板の隅から小さく文字を刻んでいく。端的に簡潔に。それを心がけて、誰が読んでも理解出来るようにしていく。

 誰が読んでも理解出来るといっても、見せなければ問題ない。ヒヅキからそれを奪うというのは中々に難しい。

 ヒヅキがそうして木の板に文字を刻む傍らにはフォルトゥナが居るも、フォルトゥナはヒヅキの手元には目を向けていないので、覗き見るつもりはないのだろう。

 見られたところで問題ないのだが、それでもいい気はしないのは確か。なので、フォルトゥナの行動は正しい。といっても、フォルトゥナはそこには興味が無いだけなのだろうが。

 ガリガリと木を削る音が静かな闇に溶けていく。夜も大分更けた頃に記録をつけ終え、ヒヅキは木の板を確認してから、それを背嚢に仕舞う。

 朝まで時間的にはまだ余裕があるが、ヒヅキは過去視の制御という気分でもなかったので、魔鉱石の精製を行う事にした。

 相変わらず地味な作業だが、少しは慣れたものだ。残りはかなり在るので、過去視の制御をしなくとも時間を潰すには困らない。

 誰かに手伝ってもえばいいのかもしれないが、ヒヅキにはその気はないようだ。急ぎではないどころか、必要になるかも分からないような代物だからだろう。

 そうして作業を続けていると、野営地から離れていた女性が帰ってくる。それに気づいたヒヅキは、もうそんな時間かと空に目を向けた。

 視線を向けた空はやや白んでいて、今が夜と朝の境目ぐらいだと教えてくれる。

 帰ってきた女性と軽く挨拶を交わすと、ヒヅキは片付けを始めた。

 それが済んだ辺りでエイン達が天幕から出てくる。挨拶を交わした後に朝食を摂ると、ガーデンに向けて出立した。

 現在地が草原の半ばを過ぎた辺りなので、ガーデンに到着するにはまだ日数が掛かる。やる事は山ほどあるのだが、移動に時間を費やすのでそちらに集中は出来ない。

 過去視を使ってみても、周囲には何も増えてはいない。偵察兵は別の道を通って国境に近づいたのだろう。今も何処かを偵察しているのだろうが、ヒヅキには興味の無い事なので、それはどうでもいい。今は新たな幻影が増えていない事が重要であった。

 そろそろ現在視えている時間の範囲ぐらいは知りたいところだが、これが中々上手くいっていない。色々試してはいるのだが、消費魔力量が減ったきり、進展はなかった。

 鉱石の精製もまだ半ば。別次元もまだ大して視れていないので、何もかもが中途半端。その事に思うところがない訳ではないが、簡単にいくのであれば既に終わらせている。

 とはいえ、今はガーデンにエイン達を戻す事が大事だろう。余計な荷物は置いていくに限る。約束はもう果たしたのだから。

 その後は大した未来はないのだろうが、それでも自分に出来る事をするしかない。そう考えながら、いつものように草原を幾日も進み続け山の近くに到着するが、山越えは大変なので、事前にフォルトゥナに確認して山を迂回する道を見つけていた。

 その道は一見遠回りになりそうだが、そちらは全体的に平坦な道のりなので、実は日数的には山を越えた場合と然程変わりはしない。しかしゆっくり休憩出来る分、山越えよりも楽な道であった。

 エイン達の事を考え、山道へと続く道を逸れて、山裾に沿って迂回する道を進んでいくヒヅキ達。徐々に温かい季節になってきているが、動く分には丁度いい季節だろう。フォルトゥナの魔法のおかげで気温は関係ないのだが。

 基本的には道は山裾に沿うように延びてはいるが、直線の道は少ない。それはこの辺りの道を使う者がそこまで多くはないというのも在るが、森を切り開き、地面を均して道を整えるのは金と労力が多大に必要という現実的な問題が最も大きい。

 なので、道は地形に沿って延びている。

 道を管理する者も元々ほとんど居なかったが、今は完全に居なくなった。おかげで荒れ放題になっていて、このままもう数年もすれば獣道になっている事だろう。そんな道ではあるが、山道に比べればはるかにマシなので、進む速度は速い。

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