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人探し95

「そうですか………………だといいのですが」

 ヒヅキが最後に付け加えた一言は女性の耳に届いていただろうが、それでも笑みは変わらない。

「その神の住処へと至る道ですが、それを探すには幾つか方法があります。例えば次元に入れるとか、次元が視えたり流れを読める力が在るなどですね。もしくは神の存在を鋭敏に感知する事が出来るとか、神の足跡を視る事が出来るとか、です」

 一瞬意味ありげな視線をヒヅキに向けた女性だが、直ぐに微笑むように目を細めてそれを隠す。しかし、それをヒヅキは見逃さなかった。いや、最初から女性に隠す気が無かったというべきか。

「何が言いたいので?」

 女性の笑みに、ヒヅキも笑みを返す。互いに見本のような綺麗な笑みだが、そこには温かみや思いやりといったものは欠片も見られない。

 もしもこの場にまともな人間が居たならば生きた心地がしなかったかもしれないが、幸いと言うか、そこにはヒヅキと女性以外にはフォルトゥナしか居ない。エイン達はまだ天幕の中で着替えなど朝の準備でもしているのだろう。それももうすぐ終わるだろうが。

 悪意の中で育ったフォルトゥナにとっては、その程度であれば気にするほどでもない。それに、何が在ろうともヒヅキの側であるという確固たる意志が在るのだから、警戒こそすれ、焦る必要は何処にも無かった。

「ただの世間話ですよ」

「また随分と物騒な世間話があったものです」

「平和が日常など夢物語でしょう?」

「慣れれば現状も、貴方が仰る平和な日常ですよ」

「ふふ。それこそ物騒な事ではありませんか。それに、そんな事が言えるのは、貴方がこんな世界でも生き残れるだけの強さが在るからでしょう」

「貴方ほど強かではありませんよ」

「そうですね。私はこれでも長生きですから」

 女性が発したその言葉には、珍しく何処か寂しげな響きが混じっていたように思えた。

「それで? 結局私に何を言いたいので?」

 そのヒヅキの問いに、女性は小さく首を振る。

「ですから、これはただの世間話ですよ。これに意味はありません。意味を見出せるとしたら、聞き手の受け方次第では?」

「……そうですか」

「そうですよ」

「………………」

「………………」

 笑みを浮かべて互いを見つめた両者だが、テントからエイン達が出て来た事で、どちらともなく顔をそむけた。

「おはようございます。エインさん。プリスさん」

 まだ僅かに残る張り詰めた空気に首を傾げたエイン達へと、ヒヅキは朝の挨拶をする。

「ああ、おはよう。何か在ったのか?」

「おはようございます。ヒヅキ様、フォルトゥナ様」

「いえ、何も無いですよ。それよりも、朝食にしましょうか」

 プリスの挨拶に首肯で返しながらヒヅキがそう二人に告げると、すぐさまフォルトゥナが空間収納から保存食を人数分取り出す。

 フォルトゥナは用意した朝食をヒヅキに渡し、それをヒヅキが全員に配り終わると、食前の祈りを捧げて朝食を開始した。

 四人が朝食を摂っている間、女性は少し離れたところから四人を見るともなく見る。

「………………」

 そうしながら、女性は先程の会話を思い出していた。

(単に彼が知らないだけという可能性も在りますが、神について知らないという事は、あの神はこの世界では知られていないという事でしょう。という事は、あの神を祀る宗教は無いという事でしょうか? もしくは信徒が少ないとか。どちらにせよ、次元を超えて調べてみた限り、あの神は着実に力を増していた。そして、あの神の眷属たち)

 女性は姿を消しているはずのウィンディーネの方へと視線を動かす。

(あれの様子や、世界の力の分布から推測するに、神は世界の管理を委譲したといったところですか。あの力の強さならそれも納得出来ますが……そうなると、まるで世界の管理者の様な判断になりますね)

 その事に女性はやや難しそうな顔になるも、気を取り直して思案を続ける。

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