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人探し93

 当時は力がほとんど無かったので、女性は話を聞くので精いっぱいで、剣を追っていた幻影達の姿までは確認していないらしい。

 その話を聞いたヒヅキは女性の姿を改めて見た後、発見した時の姿を思い出す。見た目的には大して変わっていないので、簡単に思い出せた。

 女性は洞穴の壁に背を預けて俯いていたが、その姿はどう見ても死後あまり経過していない綺麗な姿であった。

 そんな姿を見て死んでいると思うのは理解出来ても、調べないというのはヒヅキには理解出来ない。少しでも女性について知っているのであれば、剣を護って死んだにしてはどう考えてもおかしいだろう。

 勿論可能性は在るだろうが、見た目に外傷が無く、それでいてまだ生きていると言われても納得出来る綺麗な死体。

 それにあの場所には不定形生物も居たうえに、幻影で視た限り仲間だって失っている。極めつけは洞穴に満ちるおかしな魔力だ。ヒヅキに言わせれば、あの場所は何もかもが怪しかった。

 そして、その幻影達は剣に触れる。まずは一人が触れ、それが異変をきたしたところで他の者が助けようとして、結局全員剣に呑まれてしまったらしい。救いようのない愚か者達だったのか、それともそれほど焦っていたのかは知らないが、少なくともヒヅキは前者だと感じた。

 とにかく、そんな幻影達と新たに加わった幻影は、動きからして違う。

 剣を追っていた幻影達は、目的を持って周囲を探しながら女性を追っていた。しかし新たな幻影は、周囲を警戒しているかのように動きが小さい。

 それを視たヒヅキは、移動しながら記憶を掘り起こして思案していく。少しして、1つ思い当たる節が在った。

(これがエインさんの言っていた偵察か?)

 スキアの調査をしている兵士達で、スキアの目撃情報の多い国境周辺を主に調べているという話であったか。などと思い出しながら、その可能性を念頭に、ヒヅキはフォルトゥナに声を掛けた。

『フォルトゥナ。この周辺に私達以外の人間は居るか?』

 そのヒヅキの問いに、フォルトゥナは周囲の人間に意識を集中させて調べていく。

『……三……六……九人居ます。三人でひとつの塊となって別々に行動しているようですが、服装が似ていますので、同じ場所に所属している者達ではないかと愚察致します』

『なるほど。場所は?』

『現在の速度で2日ほど南下した位置に三人。そこから西に5日ほどの位置に三人。反対側に1日の距離に三人です』

 2日行った先から更に5日進んだ距離まで感知しているのかと、フォルトゥナの相変わらず広い感知範囲に内心で驚きながらも、ヒヅキは質問を重ねる。

『他には何かない? 装備とか身のこなしとか』

『装備は鉄製で……これは、ガーデンという街で目にした人間の兵士が身につけていた物に似ていますね。身のこなしも普通の人間ですね。他に変わった事は………………特にありません』

『そうか。ありがとう』

『ヒヅキ様の為でしたらこのぐらい何でもありません』

 嬉しそうに返されたフォルトゥナの言葉を聞きながら、ヒヅキはやはり偵察に来たガーデンの兵士だろうと結論を出す。そうであれば、捨ておいても何の問題にもならないだろう。それでも接触は避けるべきかもしれないが。

 そう考えたところで、フォルトゥナに、避ける為に兵士が近くなったら教えてくれるように頼んでおく。

 他には変化も無いので砦跡内を進み、砦跡を出る前にその日の移動を終える。

 砦跡内であれば休む場所が在るので、まだ夕方少し前であったが、翌日の朝まで休む事にする。丁度行きで休んだ場所も見つけたので、そこに同じように天幕を張って、敷いた防水布の上に四人で腰掛けた。

 やや早めの夕食を摂ると、話し合いを行う。エインは砦跡内を探索したそうにしていたが、フォルトゥナの手前自重しているようだ。

 目的を終えたのでそれも別にいいのだがとも思ったが、それについてはヒヅキも口を閉ざす。別にフォルトゥナを気遣ってではなく、探索に魅力を感じていなかったから。

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