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人探し90

 ヒヅキ達が崖の道を迂回している道中、それは離れたところからヒヅキを観察していた。それがヒヅキ達の観察を始めたのは、ヒヅキ達がカーディニア王国側の砦跡を探索していた辺りから。

(実に興味深い。あの何かと目立っている精霊のウィンディーネが目を付けるだけはある)

 それは離れたところからヒヅキを観察しながら、感心した様な面白そうな感じで独り頷く。

 それにしても、それが観察しているというのに、ヒヅキやフォルトゥナはおろかウィンディーネですらその存在に気づいていない。唯一、洞穴から行動を共にしている女性だけは気がついているようだが、それに敵意が全く無いので静観を決め込んでいるようだ。

 そして、それもその事に気がついている様だが、手を出さない限りは放置するつもりなのだと理解しているので、気にしていない様子。

(それにしても、彼は至れるのだろうか? 今までの行動から鑑みるに、どうも彼は過去視を修得しているようだから、あの地に至れる可能性は十分にあるようだが)

 ヒヅキを観察しながら、それは思案する。ヒヅキのこれまでの行動から、ヒヅキが過去視を会得している事にも勘づいていた。

(誰であろうとこの世界の崩壊はもう防げない。しかし、これからの彼の行動次第では、次代の者達はこの時代の者達よりは幸せに過ごせるかもしれないな)

 観察を継続しながら、それはそう考える。

 それは今代の神が創ったとされているモノの一柱なのだが、実際は今代の神が創ったモノを入れ物として、中身を完全に乗っ取ってしまった何かであった。

 別の神のにおいさえ僅かに漂わせるそれは、ヒヅキに向けていた何の感情も感じさせない瞳を動かし、姿が見えないはずのウィンディーネの方に向けた。

(あれは実に滑稽な存在だが、同時に憐れな存在だな。確かに力在る存在なのだが、何もかもが中途半端。それに環境にも恵まれなかった。もっとも、それは神の思惑通りなのだが、それに気づく事すらないというのはな……)

 呆れたような感じで内心そう呟くと、それはそのまま視線を最後尾を進む女性の方へと向ける。それが視線を向けると、その視線に合わせるように女性は一度そちらに顔を向けた。

(やはりアレは別格だな。流石は永きを生きる者。今代の神よりも永き時を存在しているだけの事はある。とはいえ、現在は力が削がれて届かぬようだが……さて、何を考えているのか)

 女性に目を向けながら、それは思案する。現状のままでは結果が見えている為に、これから女性がどうするのか僅かに期待を抱きながら。



 そんな視線を受けた女性は、何とも微妙な面持ちを一瞬浮かべる。

(また面倒な相手に観られているモノですね。あれに敵味方の認識が存在しないのは幸いですが、まさかこの世界にも観測者が生きていようとは……)

 女性は視線を受けて面倒そうにしながらも、とりあえずはそこまで気にしないようにする。観測者と呼ばれる存在は、基本的に観ているだけで世界に干渉はしてこない。そもそも観測者という存在が何なのかは、未だに分かっていない。

 観測者とは、どうして存在するのか、どうやって生まれたのか、どんな役割を担っているのか、あらゆる事が不明の存在。そもそも観測者という呼び名も、観測者を知った者が勝手にそう呼んでいるに過ぎない。観ているだけで何もしてこない存在だから観測者と。

 あちらから干渉しないように、観測者にはこちら側からも干渉できない。それでいて気づけばそこに居て、次の瞬間には居なくなっているような存在。

 唯一分かっている事は、仮に観測者が世界に干渉するような存在であった場合、神ですら危うい存在であるという事。それだけ強力な存在だというのによく分からない存在というのは、正直気味が悪い存在でしかなかった。

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