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人探し88

 最初、神は剣を封印ではなく破壊しようとした。しかしそれが叶わず封印に切り替えたのだが、実は神が最も恐れたのは、女性ではなく剣の方。

 その剣は神を唯一殺せる剣。神を殺す方法は幾つかあるが、形ある武器を持って神を害する事はこの剣でしか不可能。

(神が居る次元はこの次元ではなく、その次元に届く攻撃はかなり限られてきます。私以外でそれを成せるのは、この神擬きの一部と、あの青年の中に居るモノぐらいでしょう。あの剣であれば、その中のモノを起こさずとも済むでしょうから、あとは彼の実力次第……)

 女性はヒヅキを優しげに見詰めたまま、ヒヅキの今後を少し憂う。本人がどんな想いかは関係なく、ヒヅキが得た力は災禍を呼ぶモノなのだから。

(それにしても、些か無粋ですね。いや、悪趣味というべきか)

 ヒヅキに向けていた視線を上に向けた女性は、見極めるように目を細めた。

 目を細めた女性の視線の先では、嘲笑うような欠けた月が女性達を見下ろしている。その月を見た女性は、不快げに眉根を寄せた。





 朝になり、休息を取ったヒヅキ達は、朝食を摂ったり準備などを済ませてから出立する。

 しかし、来た道を戻るとすれば、あの崖から少し張り出しただけの道を通らなければならず、それを思うだけで気が進まなかった。

『フォルトゥナ。ここからあの崖の道を迂回して来た道に戻れるような道はある?』

 感知魔法で常時周辺の様子を把握しているフォルトゥナへと、ヒヅキは問い掛ける。

 その問いを受けたフォルトゥナは、ヒヅキの期待に応えるべくすぐさま意識を周辺の地形へと向けていく。

 そうして張り切って周囲の地形へと意識を向けた一瞬で、フォルトゥナは正確に周辺の地形を把握すると、そこから導き出した迂回路を即座に幾つかヒヅキに提案していく。それはヒヅキがフォルトゥナに問うてから1、2秒ほどの僅かな間の出来事。

 名誉挽回とばかりにフォルトゥナから張り切って提案された複数の迂回路だが、『ここから少し先に進んだところに在る細い道を――』 とか、『少し前の森の中を――』 などの道についての簡単な説明はあるのだが、ヒヅキはホーンの地形には疎いので、道は分かってもその安全性までは把握できない。

 ヒヅキとフォルトゥナだけであれば最短の道をと考えるし、それこそ崖の道を通っていただろう。しかし今はエイン達も一緒なので、その事を踏まえたうえで、フォルトゥナの提案が終わった頃合いを見計らってヒヅキは続けて問い掛けた。

『それで、その中で最も進みやすい道は何処か分かる?』

『進みやすい道ですか。それでしたらかなりの遠回りになりますが、先程お伝えしましたウチのひとつの、このままずっと進んだ先で合流している道を通って戻っていく道が進みやすいかと』

『そうか。それならそれがいいかな』

 フォルトゥナの提案に乗ったヒヅキは、フォルトゥナの説明を聞いた後に、エイン達にそれを告げて先へと進む。

 道は細いものの、来た時に通った崖の道とは比較にならないほど安全だ。

 一行は縦に並んで進む。最後尾は新たに加わった女性。

(そういえば、名前を訊いていなかったな)

 興味が無かった為に尋ねなかったが、移動を始めてしばらくしてから、ヒヅキはふとそんな事を思いだす。しかし、やはり興味が湧かなかったうえに、今のところ不便はないので、別にいいかとその考えを意識から追い出す。

 それからも歩いて進んでいく。休憩は昼に少し行ったが、ゆっくり出来る場所が無かったので短時間だけ。

 そのまま夜まで進んだが、道が広くなる事はなかった。

 岩の道で各自夕食を摂って休む。ごつごつしてはいるが、一人で座るだけなら問題ない。岩肌を背にして座って眠るぐらいの場所は見つけられた。

 とはいえ、眠るのはエインとプリスのみなので、そこまで気にする必要はない。ヒヅキとフォルトゥナも普段のように過去視の制御と周辺警戒を行い夜を過ごす。

 ウィンディーネは姿を消しているが、女性は少し離れたところで力を抜いて立ったまま目を瞑っていた。

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