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人探し86

 そんな干渉しようとした神の力を拒絶してしまえる剣の強さも特筆すべき点であろうが、そんな中でヒヅキが剣に触れられたのは、剣に受け入れられたから。

 現在剣に触れられるのは、ヒヅキを除けば女性のみ。ウィンディーネや神でさえ剣が受け入れない限りは弾かれてしまう。

 そんな剣に触れられるという事は、ヒヅキが根本で女性と近い部分があるという事になる。

「………………」

 女性はヒヅキに目を向けながら、何処となく懐かしげな光を瞳に宿す。女性の眼には、ヒヅキはまた違った姿にも視えていた。

 そんな女性には気がつかず、ヒヅキは剣を困ったように観察した後、フォルトゥナに頼んで隠蔽の魔法を掛けてもらう。それと共に、もう少しゆっくりできる場所で布で巻いておこうと、背嚢の中に丁度いい布がなかったかと、背嚢の中身を思い出していく。

 剣を使う機会などそうそうないだろうが、もしもその時があった場合は余程の時だろう。なので、布でしっかり隠しながらも、直ぐに使えるようにしておかないとなとも考えていた。

(空間収納に仕舞えればよかったのだが)

 ヒヅキでは容量不足なのでそれは出来ない。しかし、仮に容量的に可能であったとしても、その剣を空間収納に収納する事は出来なかったのだが。

 しかしそれをヒヅキは知る事なく、剣をどうしようかと考え、背嚢の横に括りつける。鞘ごと紐でぐるぐる巻きにしたので安定はしたが、背嚢を持つと剣を括りつけている方に重心が傾くので、動き難い。

「………………」

 ヒヅキは少し考え一度剣を外すと、背嚢の横から正面真ん中に括る場所を変える。

「………………うーん、これもイマイチだな」

 前面に取りつけた事で左右の重心は少しはまともになったのだが、その代り前後で不安定になった。

 それでも背嚢を前に持ってくれば、背に負っている天幕との重さでややマシにはなったが、動きづらくなったのは変わらない。

 不便ではあるが、それでも他に方法が無い。背中には荷物を背負っているし、腰に取りつけるにも紐で巻き付けるには剣が長すぎる。

 面倒なモノを託されたと思いながらも剣を取り外すと、前に持ってきた背嚢の身体側に括り直す。身体に近くなったことで先程までよりも安定したが、背嚢と身体の間に在るので、その分邪魔にもなった。

「………………ままならないな」

 小さく息を吐くと、ヒヅキは慣れるだろうと諦めて背嚢を下ろす。

 背嚢を下ろすと、先程までフォルトゥナと一緒に腰を下ろしていた岩の上に座り直した。

 休憩しながら剣を括りつけた背嚢を手にして、どうにかならないかと睨むようにして剣を見詰める。

 剣の長さ云々以前に、ヒヅキは光の剣以外は普段使わないので、しっくりこないのだ。剣など旅に出る前の頃、村を出る時ぐらいにしか縁が無かった代物だ。

 その剣も基本的に示威行為という意味合いが強かったので、そんなに抜くことも無かった。特にヒヅキの強さを周囲の賊に知らしめてからは、抜く機会などほぼ無かったほど。

 あの頃は背嚢ではなく荷車であったし、ある程度均された道をのんびり歩いていただけ。今のように道なき道を行き、常にスキアを警戒しなければならないような物騒な事態ではなかった。

(腰か背に剣を差すにも、紐で括りつけるだけというのも不便だし)

 ヒヅキは剣を見つめながらどうしたものかと思案していく。答えはそう簡単には出ないが、意味はあるだろう。

 そんな様子を少し離れた場所から眺めていた女性の横に、途中から姿を消していたウィンディーネが姿を現す。

「……何か御用でしょうか?」

 そんなウィンディーネへと、顔も向けずに女性が問い掛ける。その声は優しげでありながら、やや不機嫌そうな響きが混ざっていた。

「いえ別に。ただ、楽しそうだなと思っただけですよ」

 女性の視線を追うようにヒヅキに顔を向けたまま、ウィンディーネは何気ない感じでそう返すが、そこにはどことなく皮肉げな感じが介在しているようにも感じられた。

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