表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
761/1509

人探し82

 剣を抜いたヒヅキは、その瞬間に情報が頭の中に流れ込んできて、何故だかその剣の使い方を理解する。

 どうやらその剣は現在の神が創った世界とは別の世界で造られた剣らしく、目の前のモノをただ斬るだけではなく、異なる世界から対象の切断を可能としているらしい。

 それはおそらく、女性がフォルトゥナを斬った原理と同じなのだろう。ただ、理屈を知ってもヒヅキには理解出来なかったので、詳しくは不明。それでも使い方は解ったので、剣を振るう分には問題ないだろう。

 それにヒヅキはその剣を初めて持ったというのに、掴んだ剣が妙にしっくりきた。まるで長年愛用していたかのような馴染み方だ。

 そんな剣に疑問を抱きながらも、ヒヅキは理解した使い方に沿って、その場に適した方法でフォルトゥナへと剣を振るう。

 振るわれた剣は、フォルトゥナの身体をすり抜けるように抜けていく。傍から見れば、剣かフォルトゥナのどちらかが幻影のように思えただろう。それぐらい淀みなく剣がフォルトゥナを通り抜けたのである。

 しかし、剣を振るったヒヅキの手には、確かに何かを斬った感触が在った。斬ったといっても一瞬何かの抵抗を感じた程度だが、それでも何かを斬ったのは間違いないだろう。

 斬られたフォルトゥナは虚ろな瞳で佇んでいたが、暫くして少し瞳に光が宿る。

『フォルトゥナ?』

 それに気づいたヒヅキは、フォルトゥナに遠話で呼びかける。それで少し反応を待っていると。

『ヒ……ヅキ様?』

 寝起きのような弱弱しい声音で、フォルトゥナがヒヅキの呼びかけに反応する。

『やっと目を覚ましたか』

 それに少し安堵したような、それでいて呆れたような声音でヒヅキはそう零した。

『えっと、私は確か…………』

 少しずつ頭が働いてきたのか、フォルトゥナは曖昧な感じで思案をしていく。しかし、この空間に入ってからの記憶が無いのか、フォルトゥナは『確か剣を見て……』 と言ったきり黙ってしまう。

 そんなフォルトゥナを横目に見ながら、ヒヅキは女性とウィンディーネの方に目を向ける。そうすると、話は終わったのか二人共ヒヅキの方に目を向けていた。

「?」

 その視線に何か今までにないような感情が在るような気がしたヒヅキだが、それが何かは判らず訝しげに眉根を寄せた。ウィンディーネの方は今までの愉しむようなものの延長線上のような感じではあるが、女性の方はよく分からない。

 よく分からないのであればしょうがないと、ヒヅキは視線をフォルトゥナの方に戻す。フォルトゥナは未だに思い出そうと難し顔を浮かべていた。

 そんなフォルトゥナへと、ヒヅキは何があったのかの説明を行う。それを聞いたフォルトゥナは、凄く動揺したように挙動不審になった。

『済んだ事だ。今後に気をつければそれでいい。ただ、先程説明したように精神汚染を取り除いたといっても、その間に何かしらの不具合が身体に起きているかもしれないから、その辺りの確認もしていかないといけない』

『勿論です。直ぐに調べて報告いたします。ですから、あの――』

『ああ、見捨てるつもりはないよ。色々世話にもなっているからな』

 いい加減フォルトゥナの扱いにも慣れてきたヒヅキは、そう告げて惑うようなフォルトゥナの言葉を終わらせる。いちいち相手にするのも面倒だった。

『ありがとうございます。もっとヒヅキ様のお役に立てるように精進いたします!!』

『よろしく。頼りにしているよ』

 今にも感涙にむせびそうなフォルトゥナに、ヒヅキはやや鬱陶しそうにそう告げる。その後に何か別の話題はないかと思考を巡らせていく。

『それで、剣を見つけてからの記憶は無いの?』

『はい。お恥ずかしながら、剣を見てからヒヅキ様にお救い頂くまでの間の記憶が全く在りません』

『そうか。という事は、その時に精神を乗っ取られたのか』

 その原因が神か剣かは不明だが、ほぼ確実に神だろうなとヒヅキは予測し、密かにフォルトゥナへの警戒度を上げる。最悪これを殺さないといけないのは骨だなと面倒そうに思いながら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ