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人探し80

「あれ相手では望まれないのでしょう」

「え?」

「いえ。切り落とすのに躊躇いがあるのだとしても、剣を抜くにはそれ以外の方法はありませんよ? それとも、その女性の腕を切り落とすのに何か不都合でも?」

「まぁ、細かい作業が出来なくなるでしょうね」

「貴方は出来ないのですか?」

「どういう意味でしょうか?」

「貴方の片腕も元々の腕ではないのでしょう? であれば、腕を失ってもどうにかする方法はあるのでは?」

「それは……そうですね」

 よく分かったなと思うも、何かしらの特別な眼を持っていても不思議ではない。なのでそれは横に措いて、女性の指摘にヒヅキは頷くも、それにはエルフの国まで戻らなければならない。現在地がホーンなので、カーディニア王国を越えて進む必要がある上に、義手の作製にも時間が掛かる。

 ウィンディーネの協力を得られるのであれば、直ぐに腕を治せるのだろうが、ウィンディーネが手伝うとは思えない。それに何を対価に要求されるかも分かったものではない。加えて言うのであれば、本当にただ治すだけとも限らないだろう。

 面倒な事になったと心の底から思いつつも、他に方法はないかと諦める。

「もっとも、それが可能かはまた別でしょうが」

「どういう意味ですか?」

「そのままの意味ですよ。もしも無理でしたら別の方法を考えなければなりませんね」

「は、はぁ」

 どういう意味かと思いながらも、ヒヅキはフォルトゥナへと近づき光の剣を現出させる。その後に狙いを定めて、肩の辺りに光の剣を振るった。しかし。

「ここも、か」

 消失した光の剣に難しげな顔をしたヒヅキは、もう1度光の剣を現出させて今度は肘を狙ってみるが、案の定光の剣は消失した。

 その結果を受けて、光の剣ではなく実際の剣を使うべきだろうかと考えたものの、現在の手持ちには料理の際に使うような短剣ぐらいしかない。流石にそれで腕の切断はかなり面倒だろう。

(指ならいけるか? いや、骨を断ち切るほどの切れ味はない。節を狙うにも骨の並びなんて大して詳しくないからな)

 選択肢としては、このままフォルトゥナを見捨てるというのもあるが、それをしては不味いような気がしていた。少なくとも今以上に面倒な事になるだろうと、何故だが半ば確信している。

 それに、フォルトゥナには食料も預けているので、ヒヅキは問題なくともエイン達は厳しいだろう。

(ここに来る道中に救いの実が生っている木が在ったが、それでも少し遠いか。各自が持っている量を考えても足りない。魔力水で繋ぐにも限度が在るからな)

 ヒヅキだけならば直ぐに着くような距離でも、エイン達まで考えると遠かった。それに、フォルトゥナが居ないと気温の問題も出てくる。

 フォルトゥナは色々と優秀なだけに、今更欠けるとなると色々不都合が生じてしまう。

(それに、傍に置くとも言ったしな)

 約束は出来るだけ守る主義のヒヅキにとっては、そちらの方も問題であった。どんな形であろうとも助けられる可能性がある以上は、諦めるというのも気持ちが悪い。

 それに仮に見捨てるにしても、ここでしっかりと殺しておかなければならないだろうから、結果は同じ事。違いは生きるか死ぬかだけ。

 光の剣が使えない以上、実際の剣を使用しないといけない。その為には短剣を使うよりもエイン達から借りる方が現実的なので、その前に女性に話し掛ける事にした。

 フォルトゥナから離れた後、ヒヅキは女性の横にしゃがみ込んで耳を思いっきり近づけると、声を掛ける。

「肩や肘を斬ろうとしましたが、手首同様無理でした」

「やはりそうでしたか。解呪は使えないのでしたよね?」

「はい」

「私が動ければよかったのですが、もう力が残っていないのですよ」

「力?」

「お恥ずかしい話、今の私は動力炉、貴方でいうところの心臓が無いので、ほとんど力が出せないのですよ。それこそ喋るので精いっぱいですね」

「心臓……水晶のような欠片のですよね? それでしたらありますよ」

「おや、そうでしたか。それを頂いてもよろしいですか?」

「勿論です。これを渡す為に私はここまで来たのですから」

 そう告げてから顔を離すと、ヒヅキは背嚢の中から水晶の欠片を収めている小箱を取り出した。

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