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人探し77

 妙な魔力を放つ剣を警戒しながら、ヒヅキはとりあえずフォルトゥナの手を剣から剥がそうと力を入れるが、フォルトゥナは剣を掴んだままビクともしない。

『フォルトゥナ!! 聞こえるか!?』

 近場から剣が放つ妙な魔力のせいで呼吸もし難い状況でも、遠話での会話は出来るようで、線がまだ繋がっているのはヒヅキには解った。しかし、それに対するフォルトゥナの返答は無く、ヒヅキはこれからどうすべきかを急いで思案する。

(剣を掴んだまま固まったかのようにびくともしない。ならばフォルトゥナの腕を切り落とす? 流石にそれは短絡的過ぎるか。剣の方はどうこう出来るとは思えないし、誰かに助けを……といっても、そんな相手は誰も居ない。独力でこの剣が放つ魔力に対処は出来ないな、魔力量が足りなさすぎる。今更フォルトゥナの手を剣から離しても意味はないと思うが、他に方法も思いつかない。そもそも、これでは既にフォルトゥナは呪われた事になるのか?)

 ヒヅキは疑問に思いながらも、どうにかして剣からフォルトゥナの手を離そうと、掴んでいたフォルトゥナの腕に目を落とした。

(剣には直接触れてはいないが、これでこちらも呪われるなんてことはないよな? まぁいい。他に方法もないし、手首辺りから切り落とすとするか。ウィンディーネの反応も気になるしな)

 一瞬視線をウィンディーネの方に向けたヒヅキは、愉しそうに気味の悪い笑みを浮かべている姿を確認する。

 この状況をウィンディーネが作った訳ではないのだろうが、それでも望んだ展開ではあるのだろう。もしくは、単にヒヅキが焦っている様子が愉しいだけか。

 その事に苛立ちながらも、ヒヅキは周囲の状況を確認して剣以外の脅威が無い事を確かめた後、刀身の短い光の剣を発現させる。

 そのまま剣を握っているフォルトゥナの手を確認後、ヒヅキはその手首に狙いを定めて光の剣を振るう。しかし、意図せず光の剣がフォルトゥナの手首に触れる直前に消滅した。

(……どういう事だ?)

 光の剣を掴んでいた手に目を向ける。別にヒヅキの魔力が尽きた訳ではないし、魔力操作を誤ったわけではない。なので、ヒヅキにも光の剣が消滅した原因が分からない。試しにもう1度光の剣を現出させてみると、何事もなかったかのように手元に現れた。

(…………ふむ。フォルトゥナを傷つける事が出来ないのか、それともこの剣の影響なのか)

 また別の可能性もあるが、現出させた光の剣に目を向けた後、ヒヅキは再度フォルトゥナの手首へとその光の剣を振り下ろす。

(やはり消滅するか。どういう事だ? 原因は分からないが、このままではフォルトゥナを剣から離すことが出来ないな)

 内心で苦々しく思いながらも、ちらりと確認したウィンディーネは、変わらず気味の悪い笑みを浮かべたまま。その様子から、ヒヅキはこの光の剣の消失にウィンディーネは関係していないのだろうと予測を立てた。

(さて、どうするか。引っ張ってもフォルトゥナが剣から手を離す様子はないし、かといってこのままでは切断もできない。肩辺りからなら可能かもしれないが、既に手遅れだろう。もうフォルトゥナは見捨てて戻るべきか……結局このままフォルトゥナを措いていくとどうなるんだ?)

 面倒な事になったものだと思いながら、剣の方に目を向ける。改めてしっかりと見たその剣は、夜を思わせる美しい剣であった。どうしたものかと思案していたヒヅキが、一瞬考えていた事を忘れるほどに。

 しかしすぐに我に返ると、剣の観察を始める。

 その剣が発する妙な魔力以外は、持ち手が夜空を切り取って成形したかのような奥深い藍色をしており、刀身は月を剣の形に鍛えたかのような神聖さを感じさせる白銀。その刀身は半ばまで床に突き刺さっている為に、全容が確認できない事がひどく残念に思うほど。

 装飾は持ち手の部分に僅かに見られるが、それも持ちやすくするための装飾であるのが窺える。

 そんな芸術品のような美しい剣から発せられる気持ちの悪い魔力だけがあまりにも不自然で、それが別の誰か、この場合神の仕業なのが容易に判るほどであった。

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