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人探し75

 ヒヅキは内心で溜息を吐いたが、神殺しの剣というのが魅力的なのは確かであった。それに、追っている対象がそれを求めたのであれば、1度確認するのも吝かではないだろう。

 もっとも、ウィンディーネの思惑がどうあれ、幻影が先に行った後に戻って来ていないので、結局は洞穴の奥へと行かなければならないのだが。

 ヒヅキは嫌々ながらも、ウィンディーネの思惑に乗る事にした。封印に触れさえしなければ問題ないだろう。そう思い、しょうがないと自分に言い聞かせながら、ヒヅキは歩みを進める。

 ウィンディーネの話し振りからは既に脅威は去ったようではあるが、入り口での事を思えば、まだ何があるとも知れない。なので、油断せずに周囲を警戒しながらヒヅキは洞穴を進む。

 しばらく洞穴の狭い通路を進むと、前回休憩した時のような少し開けた場所に出る。光球がその場所を照らし出すと、そこには沢山の骨が転がっていた。

「………………ふむ」

 それはヒヅキが過去視で追っていた幻影を追っていた幻影の成れの果て。全部で三人分だが、その少し先に一本の剣が岩に垂直に突き刺さっている。

 その剣の少し後方では、壁に背を預けるようにして座り、頭を伏せている何者かが居た。その正体は、ヒヅキの過去視で判明する。

「あれが例の存在……あそこで何を?」

 その項垂れるように座っている者こそ、ヒヅキがここまで追ってきていた幻影を残した者。その者は周囲の骨になった者達とは異なり、見た限り損傷は何処も無い。ただ座っている様にしか見えないのだが、動く様子は無かった。

 ヒヅキが開けた場所に入ると、エイン達も後から入ってくる。

 警戒しながら剣の傍に座る対象に近づくヒヅキは、最初に手近に在る骨を検分していく。

 過去視で視る限り、それらは剣に触れようとしてこうなったよう。ただ、何が起きたかは分からない。剣に触れてすぐに死んだわけではないので、何かしらの毒が仕込まれていたのかもしれないし、ウィンディーネの話し振りから触れた者に何か呪いでも降りかかるようになっているのかもしれない。

 面倒なものだと思いながらも、触れなければ問題ないかと骨の様子を確認する。

(それにしても、これは何故もう骨に? 先程の粘体生物が肉を食ったという事だろうか?)

 そう思って骨を見てみるも、先程粘体生物を倒した場所に在った骨と違い、溶けたような痕跡はない。

(やはり呪いか? この剣の封印と粘体生物は同じ神の残滓らしいから、呪いも同じ酸にまつわる呪いなのかもしれないな)

 三人分の骨を検分した後、剣の近くで座っている対象の方に目を向ける。骨に関しては、骨格だけでは種族までは全く分からなかった。ヒヅキもそこまで種族に詳しい訳ではない。

 フォルトゥナも特に何も言ってこなかったので、エルフではないのだろう。もしくは骨が転がる場所に来てからずっと剣の方に目を向けているので、骨の方に興味が無いのかもしれないが。

(…………それにしても、フォルトゥナのあの目。剣に魅入られている? いや、あれは憎しみか? 何故…………フォルトゥナの力は神が与えた力も混ざっているから、中に神の感情でも混ざっているとか? 仮にそうだとしたら危険だな)

 一瞬、今の内に排除した方がいいのだろうかと考えたヒヅキだったが、まだそうと決まった訳ではないのでそれは止めておく。

 とりあえず、出来るだけ剣から離れつつ対象の方へと近づいていくことにする。

 回り込むようにして対象に近づき、周囲に何も無いのを確認してから対象の横にしゃがみ込む。

 確認した対象は、銀のような薄い金色の長い髪で顔を隠しているが、身体の線が細く、やや曲線を帯びているような気がするので、おそらく女性なのだろう。

「えっと、大丈夫ですか?」

 念の為に声を掛けてみるも、反応は無い。呼吸している音もその際の微かな動きも確認出来ないので、呼吸もしていないと思われる。

 それにまるで人形だなと思いながらも、ヒヅキは慎重に対象の肩に手を置いた。

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