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人探し74

 粘体生物に光球を取り込ませたヒヅキは、そのまま取り込ませた光球を爆発させる。

 光球は大きくないので、威力もそれに比例したもの。しかし、現在地の様な狭い空間で使用するにはかなり危険な魔法であった。

 しかし、粘体生物の内部で発生させた爆発は、粘体生物が衝撃を吸収したのか粘体生物の外には漏れなかった。それでも粘体生物は耐えられなかったようで、見た目は何も変わっていないが、数秒後には形を保てなくなったのか球体が溶けるようにして崩れていく。

「………………死んだ、のか?」

 その様子を眺めていたヒヅキは、形が崩れたままの粘体生物を眺めながら、そう呟いた。そこに。

「おめでとう。あれだけ警戒していた割にはあっさりと倒したわね」

 姿を消したままのウィンディーネの声音が届く。

「倒した? この粘体生物が何か?」

「あら? 気がつかないで倒していたのね」

 おかしそうにそう告げるウィンディーネの言葉を聞きながら、ヒヅキは形を保てなくなった粘体生物の方に視線を向けた。そして僅かに考えた後に、ああと小さく漏らした。

「これが神の残滓というやつだったのですか?」

「ええ、そうよ」

 ヒヅキの納得しかねるとでもいうような反応に、ウィンディーネは楽しげに頷いたようにそう返した。

 「しかし、まだ奥から嫌な感じはしていますし、何よりこの粘体生物からはそういった感じはしませんでしたが?」

 奥へと目を向けたヒヅキは、そのまま粘体生物だったモノの方へと目を向ける。

「それはそうよ。私は別に神の残滓がひとつだけとは言っていないもの」

「という事は、この奥にもまだ神の残滓が居るのですか」

「ええ。といっても、奥に居るのは生き物ではなく石だけれども」

「石? 魔鉱石みたいなものですか?」

「そうね。そう言った方が解りやすいわね」

 ヒヅキの問いに、ウィンディーネはやや考えるような感じでそう答えた。

「穢れている訳ではないのですよね?」

「あれも神の影響だから似たようなモノよ。ただ、こちらの場合は単に力が強いだけで他者への影響力が低いというだけね」

「では、魔物が誕生したり神が堕ちたりする可能性は……?」

「限りなく低いわね。無いと言ってもいいかもしれないぐらいに。少なくとも、神が堕ちるような事はないわね」

「そうですか……」

「ああ、この先に行っても魔鉱石は無いわよ? ただ……そうね、武器はあるようね」

「武器?」

「ここに神の残滓が在った原因。神がここを訪れた切っ掛け」

「どのような武器で?」

「簡単に言えば、神を殺せる剣よ」

「神を殺せる剣?」

「ええ。ヒヅキが追っている者が所持していた剣。由来は知らないけれど、神が壊せなかった唯一の剣」

「………………では、封印されているという事で?」

「端的に言えばそういう事ね」

「………………」

 過去視で幻影を視ているヒヅキは、ウィンディーネの話を聞きながら、未だに奥から感じられる気配が在るという事は、幻影達は誰もその剣の封印を解けなかったという事だろうかと考え、どうしたものかと考える。

「その封印に害は?」

「封印を解こうとしなければ問題ないわよ」

「……では、ここで引き返しますか」

「うーん。それもいいけれど、でも、本当にそれでいいのかしら?」

「どういう意味ですか?」

「神殺しの剣よ? 魅力的じゃないかしら?」

「いいえ、全く。それに封印を解こうとすれば害が在るのでしょう? ならば必要ありません」

「まぁ、それも決断ね」

 何か含むようにそう呟くウィンディーネ。しかしそれは、どうやらどうしてもヒヅキをその神殺しの剣とやらの許まで行かせたいのだと分かる声音。

 それを受けて、ヒヅキはこれは面倒な事になりそうだなと、そっと内心で溜息を吐いたのだった。

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