表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
751/1509

人探し72

 死体に目を向けたままそう思ってヒヅキが首を捻っていると、フォルトゥナから答えが返ってくる。

『その死体の周囲にまだ魔力が漂っていますので、判断出来ました』

『魔力が漂う?』

 フォルトゥナの答えに、ヒヅキは再度首を傾げた。そんな話など今まで読んだ事は無かったし、聞いた事もなかったから。それにヒヅキ自身はあまり自覚が無いものの、ヒヅキは魔力に敏感である。そんなヒヅキでも、死後に周囲に漂うという魔力を感じた事がないというのは妙な話であった。

『はい。これは一部の種族にしか感知できないと言われているモノですので、ヒヅキ様が知らないのも当然かと。それに、それを感知するだけではなく、一時的に魔力をその場に停留させる事が出来るのも感知できる者達だけですから、そもそもその場に居合わせる事自体が少ないのです』

『なるほど』

 エルフの眼みたいなモノかと納得したヒヅキは、視線を足下の死体に向けたまましゃがんだ。

(しかし、なんでこの死体だけこんなに潰されているんだ?)

 過去視で視える幻影に、死体を量産した存在は映っていない。だが、死体の損傷具合からそれなりの大きさである事が窺えた。

(分からないが、エルフに何か思うところがあるのか、それともこれが何かしでかしたのか、はたまた気紛れか)

 一通り死体を検分したヒヅキは、立ち上がって周囲に眼を向ける。エルフは骨格自体は人間と大差ないので、特に調べるべき部分も無い。持ち物も大したものはなかった。

 周囲に向けた過去視には、対象を含めた残った幻影が奥へと移動する姿が映るのみ。過去視を切って感知魔法に集中するも、周囲にはフォルトゥナ達ぐらいしか感知出来ないし、感知範囲も相変わらず狭い。

 ヒヅキは感知を諦めると、慎重に洞穴の奥へと進んでいく。先頭に光球を任命しながら。

「………………」

 周囲に目を向けながら、慎重に歩みを進める。ヒヅキの後に、エイン・プリス・フォルトゥナのいつもの順で続いている。

 先頭を進む光球が照らすのは、ごつごつした岩肌のみ。過去視で視てみるも、幻影は先に行くばかりでこの辺りでは戦闘は無かったよう。

 次第に狭まっていく道幅。奥から感じる嫌な空気はどんどん濃くなっていく。

 ヒヅキはいつでも光の剣を発現させられるように待機させながら、道幅を目測しながら発現させる光の剣の長さを調整していく。

 張り詰めた空気の中でヒヅキ達が洞穴を進むと、少し開けた場所に到着する。奥に見える道はまた狭まっているので、そこは道のコブの様な場所であった。

 ずっと歩きっぱなしだったので、そこで一旦休む事にする。エイン達は壁に寄りかかるようにして座り込むが、ヒヅキとフォルトゥナは立ったまま周囲を警戒しながら休憩する。食事や魔力水を配るついでに補充も済ませると、食事を開始する。

 各自無言で食事を終わらせると、身体を休める事に集中していく。洞穴の中なので現在の時刻は分からない。

 程なくして休憩を終えると、元の隊列を組んで先の通路へと歩みを進める。

 思っていたよりも洞穴は奥へと続いていた。洞穴は曲がりくねった緩い坂道で構成されているので、現在地も分からない。

 それからも狭い道を進んでいると、過去視に映る幻影のひとつが少し先で倒れているのが視えた。

「………………毒か?」

 顔を掻きむしるようにして倒れた幻影の様子にそう思いながらも、死んだのが一人だけというのに疑問を抱きながら注意して死体に近づくと、そこには標本の様に綺麗な形で骨のみが転がっていた。

 しゃがんでそれを検分してみると、周辺に溶けた様な感じが残っている。骨も少し細くなっている様に思えた。

(毒というよりは酸? 少なくとも、これが骨になってからはここを誰も通ってはいないのだろう。奥に居るのが空を飛べるならそうとは限らないが)

 骨を眺めながら考えたヒヅキは、周囲に異常がない事を確認した後に、念のためにフォルトゥナにも確認を取ることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ