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人探し70

 エイン達が天幕から出てきた後、何事も無かったかのように朝食を済ませる。

 天幕の周囲には戦闘跡が少し残ってはいるが、気にしなければ気にならないほど軽微なモノ。戦闘らしい戦闘が最初の襲撃の時だけなので、それも当然ではあるが。スキアは遺体が残らないのも大きい。

 そのおかげかは知らないが、準備や片付けを済ませて出発するまでにその話題は一度も出なかったし、出発後もまるでそんな事などなかったかの様に話題に上らなかった。

 それから幻影を追いかけて移動すること数日。ヒヅキ達は以前フォルトゥナの報告にあった洞穴が視界に入る場所に到着していた。

「………………なるほど。確かに妙な何かを中から感じるな」

 洞穴に視線を向けながら目を細めたヒヅキは、その感覚に首を傾げる。それは穢れに近いが、少し違うように感じる。

 ヒヅキが視線を横に向ければ、そこにはいつの間にか姿を現したウィンディーネが面倒そうな目を洞穴の方に向けていた。

「それで? あそこには何が在るのですか?」

 ヒヅキの問いにウィンディーネはヒヅキの方に顔を向けると、少し考えた後に僅かに面白そうな笑みを浮かべる。

 それに嫌そうな顔を返しながら、ヒヅキはウィンディーネの答えを待つ。

「そうね、あそこには神の残滓が残っているみたいね」

「神の残滓?」

「ええ。簡単に説明すれば、穢れがそのまま具現化したモノとでも言えばいいかしら?」

「…………それは大丈夫なので?」

「問題ないわよ。穢れが具現化したといっても、あの洞穴内からは出てこられないから、あの中に入らない限りは問題ないわね」

「では、あの中に入るとなると?」

「危険ではあるけれど、ヒヅキなら対処出来るでしょうから、それでも問題ないと思うわよ?」

「そうですか……それで、何故神の残滓なんてモノがあの場所に?」

「さぁ? 詳しくは分からないけれど、最近あの場所に神が現れたんじゃないかしら? 分身体か本体かは知らないけれど……おそらく分身体でしょうが」

「分身体なんて居るんですね。それにしても、訪れただけでああなるとは、面倒な存在だ事で」

「そこは同意するわ。あれは面倒な存在だからね」

「はぁ。ウィンディーネと同じですね」

「あら、失礼ね。あれと同じにされるのは心外だわ」

「それで、その神の残滓は、普通に倒す事が出来るのですか?」

「ええ。神の残滓なんて大層に呼んだところで獣と大差ないから、魔物と同じようなものよ」

「そうですか」

 ウィンディーネの情報に頷いたところで、ヒヅキは洞穴の方に目を向ける。過去視で視る限り、対象はその洞穴の中へと入っていっている。他の幻影も吸い込まれるようにその洞穴の中に入っていた。

 つまりは入らないという選択肢は無いという事だが、その事にヒヅキは一つ息を吐き出すと、警戒しながら洞穴に近づいていく。

 その洞穴の入り口は崖にぽっかりと開いた穴で、自然と出来たのだろう、ごつごつとしていて整ってはいない。

 しかし、よく見れば戦闘跡の様な傷が少しある。だが浅いモノばかりで、戦闘の余波で傷ついたのだろう。

 洞穴の中は暗い為に外からは見えないのだが、過去視で視てみれば幻影だけは瞳に映る。

 視る事の出来る幻影は、対象の幻影以外が何かと戦っているところであった。しかし、その戦っている相手については視る事が出来ない。

 生き物ではないのだろうか? と疑問に思いつつその幻影を追っていくも、幻影のいくつかは最終的に倒れて動かなくなっている。そのまま動いていない所から、今もまだそこに居るのだろう。

 近くには何かの気配は感じないので、ヒヅキは入り口から光球を先行させて飛ばしてみる。

 その光球の明かりに照らされるのは、武骨な岩肌と半ば白骨化している死体。しかし、その他の存在は確認出来ない。

 その後少しの間様子を見た後、何も来ないと判断したヒヅキは、洞穴の中に足を踏み入れた。

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