人探し66
翌朝はエイン達はいつもよりやや遅く起きてきた。やはり岩の上では疲れが抜け切れていなかったのだろう。
それでも十分朝早いので然して支障は無いのだが、フォルトゥナの不機嫌度が若干上がったような気がして、ヒヅキは宥めるようにフォルトゥナの頭を撫でた。
それから朝食にした後、片付けや準備を済ませて道に戻ると、移動を開始する。
過去視を発動させながら幻影を追って暫く進んでいると、フォルトゥナから報告が届く。
『ヒヅキ様。まだ先ではありますが、中が確認出来ない洞穴が在るようです』
『中が確認出来ない?』
『はい。感知魔法でそこに洞穴が在るのは判るのですが、洞穴の中の様子までは判らないのです』
『ふむ。原因は分かる?』
『洞穴の中に何か強力な力が滞留しているか、強力な存在が居るのかもしれません』
『なるほど。また穢れでも在るのか、神みたいな存在でも居るのかな? 流石にスキアではないだろうけれど……』
フォルトゥナの説明を聞いたヒヅキは、幻影を追いかけながら思案する。フォルトゥナの感知を妨げるほどの存在などそうそう居はしないので、その場合はヒヅキでは対処が難しいだろう。また、フォルトゥナの感知を妨害するような力場など近づきたくもない。
(それでも、対象がそこを目指していたら近づくしかないのだが)
可能性としては洞穴の中に入る事もあり得るだろう。そうならないようにヒヅキは願うが、往々にしてこういう場合は叶わない事が多い。
(しかし確実ではない。そもそもこの対象の目的がまだ分かっていないからな。それに仮にそうなった場合は、原因は最近あるという事になるから、特定の一助にはなるか)
最悪ウィンディーネにでも訊いてみようとヒヅキは考えながらも、今は考える必要はないと頭の外に追い出す。
過去視に映る対象以外の何者か達は、そこら中を動き回って痕跡を探しながら進んでいる様子。それは今までと変わらないので、それはいい。
視線を上に転ずれば、謎の翼を持つ存在が飛んでいっているのが分かる。進路もヒヅキ達が追っている対象の進路と重なっている。
(偶然、ではないのだろうな。何なんだろうな。目的が判らない事には何とも言えないが、それでも対象が重要なのか、それとも対象が目指している物が重要なのか…………少なくとも、対象を長い事追っている幻影の者達は、対象の足取りを追っているのは確かだろう。だが対象が重要なのか、それとも対象が何かを追っているのを知っていて追っているのかは別だろう)
前方に視線を向けながら、ヒヅキは思案する。可能性という話であれば、目の前に映る幻影達とも遭遇する可能性が在るだろう。その場合、戦闘になる可能性も在った。
「………………」
ヒヅキは観察しながら思案するも、仮に戦闘になったとしてもフォルトゥナが居れば問題ないだろう。ヒヅキでも脅威に感じる相手はいないと思われる。
(それでも、直接対峙すればまた感じる気配も違うだろうが。それに、何かしら得て強化されているかもしれない。普通に成長している分には敵ではないと思うが)
考えていると昼になっていたので、久方振りに昼休憩を取る。疲れがたまってまた遅く起きられては、フォルトゥナがより気分を害してしまうだろう。
ヒヅキにとってはエイン達よりはフォルトゥナの方が重要だが、それでも険悪になられても困るので気を配るぐらいはする。林は抜けたものの少し道幅が広いので、休憩する場所には困らなかった。
昼休憩をして昼食を食べ終えると、少し食休みを挿んで移動を再開する。
足取りは順調ではあるが、増えていく幻影にヒヅキはげんなりとする。視線を上に向ければ、新たに翼を持つ何者かが二人ほど合流しているところであった。




